(3)自分の頭で考える
 そしてこれが一番大事なことだ。ところが投資家の方たちの中には自分で考えるのが嫌で、その判断を人に委ねたがる人たちがいる。というよりも、むしろそういうタイプの投資家の方が多いかもしれない。

 私もたまに株式セミナーを聞きに行くことがあるが、そんな時によく目にするのが、以下のような光景だ。景気やセクター別の動向、金利や為替といった話をしている時はぐっすり寝込んでいる参加者が「では以上の背景を踏まえて注目銘柄についてお話します」といった途端にガバっと起き上がって熱心にメモを取り始める。

性格の良い人ほど、株でもうからない納得の理由筆者・大江英樹氏の近著「あなたが投資で儲からない理由」(日経プレミアシリーズ)

 また、○○ショックといわれるような大きな市場の変化だけではなく、日々さまざまな情報によって市場は動いていく。それらについて、まず自分で考えることをせず、何でも人の意見をまず聞くというのが冒頭で述べた五つのタイプのうち、2つめの「何かあった時に人の意見を聞きたがる」というパターンだ。確かに投資の判断をするというのは勇気のいることだ。判断した結果が必ずうまくいくとは限らないのだから、失敗して損をするということも当然あり得る。もしうまく行かなかった場合に後悔したくない、自分のせいにしたくないという気持ちが出てくるのはごく自然なことだろう。人は誰も意思決定にあたって後悔を回避したいと思うものだからだ。

 そこで人に聞いてその人の言うとおりに売買したほうが、その時点では、かなり気持ちが楽になる。「あの人の見通しは良く当たる!」とか「あの人の言うことは正しい」と信じることはとても楽だし、仮に当たらなかったとしてもそれは自分の責任ではなく、当てられなかった“あの人”のせいにできるからだ。

 つまり自分のせいで後悔したり、損失が生じたりすることを避けたいという気持ちから占い師に聞くのと同様、誰かに聞こうとする。これは前述のケース5「占いが好きなタイプである」といった人たちだ。ところが、投資で最もやってはいけないことは人の言うことを安易に信じることだ。信じるという行為は言い換えれば「思考停止」になることだからだ。マーケットに向かう時は考え抜くことがとても大切なのだ。頭を柔らかくし、柔軟に対処することこそが成功する道だ。なぜなら相場に「絶対」ということはなく、常に柔軟に考えながら臨機応変に自分で判断していくことが欠かせないからである。

 投資はそれほど簡単なものではない。普通の人が自然な感情で株式投資をしてももうかるとは限らないどころか、むしろ損をする可能性の方が高いかもしれない。

 誰にも頼らず自分で考え抜くということ、人の言うことをうかつに信用しないこと、そして人と逆のことを平気で行えるメンタリティを持つことが必要で、かつ忍耐強さも求められるのが株式投資なのだ。

 性格の素直な人=性格の良い人ではなかなかもうけることができないというのはある意味、真実を表しているだろう。

(経済コラムニスト 大江英樹)