最大の資源である「人材」を守る環境作り
山口 米国でいち早く「マインドフルネス」を取り入れた会社の1つがGSだったと記憶していますが、そのようなトレーニングも実践しましたか?
キャシー そうですね。競争がし烈な金融業界で優秀な人材に長く働いてもらうためには、精神面のケアが不可欠です。そういったメンタルケアの施策の一環として、「マインドフルネス」を人事部が中心となって取り入れたところ、相当なプラス効果がありました。
「心理的安全性」はイノベーションにつながる
山口 最近、「心理的安全性」という言葉がよく聞かれますが、誤解されているケースが非常に多いと感じています。というのも、心理的安全性の確保と優れたパフォーマンスの達成を切り離して考える人が少なくないのですが、この2つは両立し得る別の概念です。
私が以前在籍していたボストンコンサルティンググループの東京オフィスは、2000年代初頭の当時は「体育会系」的な雰囲気があり、パートナーはとにかく周りにプレッシャーを厳しく与えていました。
しかし、ニューヨークオフィスから移ってきた津坂美樹さんという女性のシニアパートナーは、「自分にかかっているプレッシャーを部下にそのまま流すのは絶対に禁物だ」という考え方を東京オフィスに持ち込みました。私は彼女のマネジメントを見て、心理的安全性と高水準のパフォーマンスは両立できるのだ、と気づかされましたね。
キャシー 主流の人の意見だけでなく、様々な立場の人の意見を意思決定の過程に反映する、という文脈での「心理的安全性」はよく耳にします。これが担保されないと、周囲と意見や考え方が異なるアウトサイダーが組織の中に長く留まれません。そうすると、グループの同質性が高まり、イノベーションを起こすのが難しくなってしまいます。
ですから、もし組織の成長が伸び悩んでいたら、「この組織で心理的安全性は確保されているのだろうか?」という点を検証すべきだと思います。
(本稿は、ダイヤモンド社「The Salon」が開催した、ハーバード・ビジネス・レビューEIシリーズ『リーダーの持つ力』の刊行記念イベントのダイジェスト記事です。対談の後編は7月30日(金)公開予定です)