住宅ローンの利息の支払いよりも
節税額の方が多い「逆ざや」

 ここで言う逆ざやとは、金融機関に支払うローン返済における利息の支払い額よりも住宅ローン減税による節税額が多い状態のことを指す。その住宅ローン減税の現行ルールは複雑なのだが、ざっくり言うと新築の注文住宅は9月までに、分譲住宅は11月までに契約しないと適用とならない。

 長期優良・低炭素住宅ではない新築注文住宅の場合、毎年末のローン残高の1%(最大40万円)を所得税などから控除する。控除の対象期間は13年間だが、11~13年目は建物購入価格(上限4000万円)の0.66%と比較して小さい方が控除額となっている。13年間の最大の総控除額は480万円だ。

 一方、超低金利時代のため、住宅ローンの金利は変動金利を選択した場合、1%未満のものばかりだ。ここに“錬金術”の仕掛けがある。

 例えば年収1000万円の人が6000万円の住宅ローン(元利均等、35年払い、ボーナス返済ゼロ)を利率0.41%で組んだ場合、13年間の総控除額は480万円。一方、金利が13年間そのままだとしたら利息の支払額は約265万円であり、この間の逆ざやは約215万円となる。

 金利が同じならば、逆ざやをより多く得られるのは毎年末のローン残高が控除対象上限の4000万円をキープする人だ。つまり初めから借入額が多い人であり、高額な物件を購入できる富裕層の傾向が強い。

 錬金術のうまみをより実感できるのは、得てして富裕層なのである。

 このような錬金術を国が見逃すわけがない。