伝統を受け継ぐ者としての使命を強く感じました。
なぜ、NHKのアナウンサーは、きちんと話すことができるのか?
それは体系立てられた伝統教育を受けているからです。
そしてもう一つは、視聴者という他者の目に、日々さらされているからです。
NHKで学んだ話し方のスキルは、他者の目で磨かれたダイヤのようなものなのです。
実際の放送現場はシビアです。
テレビを見ている視聴者は、信頼できないと思ったら、ほんの数秒でピッピとチャンネルをかえてしまいます。
そうならないために、NHKにはある極意が受け継がれています。89年の歴史の中で培われた、数秒のうちに信頼される話し方のノウハウです。
それはまさに「NHK式」とでも言うべき、信頼されるための方法です。
本書では、私が17年間、NHKで学んだ信頼を勝ち取る話し方を「NHK式7つのルール」(→31ページ)として、具体的な方法にまとめました。
たとえば、「『1分300文字』でゆっくり話す」「『一文50文字以内』にする」「独り言から入る」などです。
かつて、私はNHKのキャスターから民放のアナウンサーになりました。
しかし、わずか半年でクビになりました。その後、NHKの試験を受け直し、再入局。直後に担当したニュース番組で「視聴率20%超え」という経歴を持っています。
民放を半年でクビになった私が、なぜNHKで高視聴率を取れたのか?
その謎をどうしても解明したいと思いました。
さらに、「NHK式」の信頼される極意を心理学で科学的に解明し、誰もが再現できるものにしたいと、NHKでアナウンスの仕事を続けながら大学院で心理学の研究を始めました。
そして、実際の放送で心理学のテクニックを使ったところ、視聴者やスタッフからの反応が明らかに変わったのです。