コピーの1枚の印刷、上司から頼まれた資料づくり、クライアントへの提案資料作成、長期で大規模な全社プロジェクト遂行、これらの作業すべてにサービスを提供する相手がいます。このような作業すべてを、本書では「仕事」と定義します。
仕事では、依頼相手をお客様として、顧客視点を意識したサービスを提供するのです。それも、残業ゼロで実現する必要があります。つまり、最小の労力でいかに生産性を最大化させるかが常に問われるのです。
日本では、仕事の質の最大化へのこだわりは強いものの、いまだ「時間はいくらでもある」という思想が根強く残っているので、生産性へのこだわりが希薄です。私も日本で仕事していた頃は、残業で何時間働いたかを武勇伝のように語っていました。
マイクロソフトシンガポールに転職した14年前、プロジェクトの期限を死守するために、部下に残業を指示し、上司に「勝手に残業をさせるな」と怒られました。そんな矢先、プロジェクトが佳境に入り、上司にまた怒られるのを覚悟して、チームの部下たちにも残業してもらいました。
徹夜覚悟の状況下で、部下の一人が帰ろうとしました。理由はお子さんの風邪でした。しかし、よくよく聞くと、専業主婦の奥さん、お父さん、お母さん、義理の弟さん夫妻が、すでにお子さんに付き添っていたので、無理に頼み込んで残業してもらいました。
その翌日、部下にお礼を言いに行ったら、
「次、残業なんか頼んできたら辞めてやるからな!」
と怒声を浴びせられ、私は唖然としてしまいました。
グローバル社会=「残業ゼロ」の社会なのではなく、「残業ゼロにしないとクビ」の社会だったのです。
自らも残業できず、部下に残業させることもできません。日本で培った仕事術をいったん忘れて、仕事のできる外国人たちの仕事術を研究しました。
そして、14年間、トライアンドエラーで模索して、自分なりの仕事術を構築することができました。
本書で紹介する「仕事圧縮術」は、4つのステップで実現します。