ネガティブ・レバレッジに注意

 ここで注意すべきは、この融資でのレバレッジにより、自分のキャッシュフローが有利になるのか、不利になるのか、である。

 例えば、一昔前の某地方銀行では属性のよいサラリーマンなら高金利(4.5%)ではあるものの、誰でも融資が受けられた。

 ほかにも東南アジアなどの新興国でのコンドミニアム投資では、投機的な値上がりを狙って、高金利(8~9%)での現地融資を組ませる営業もたくさんある。この融資の元利均等返済の度合いによっては、空室率が20%出た時点でローン後キャッシュフローがマイナスになることさえある。

 BOE分析をやってみても、ローン後キャッシュフローがほとんどないか、空室率が上がったり、金利がさらに上昇したりしたら、不労所得どころではないから、給料から補填しなくてはいけなくなるような融資条件は組むべきではない。

 つまりBOE分析(スナップショット)でも、あまり見映えのよくない写真となってしまう。こういった融資(てこ)の使い方をネガティブ・レバレッジという。現在の日本では考えにくいが、金利の上下が頻繁に起こる米国や新興国投資では、特に注意が必要だ。

 ただ、そうした国は家賃も徐々にインフレが起こるため、賃料がじわじわと上昇しながら入ってくる物件の場合は、毎年の営業純収益も連動して上がってゆくため、問題はないだろう。

 例えば、米国の場合はインフレに連動して、毎年3~4%程度で家賃も上がってゆく。

 東南アジアなどの新興都市も激しいインフレと不動産価格の値上がりが一見魅力だが、注意すべきは値上がりしてゆく家賃を払える人が、その新興都市にどれほどいるか? という借り手のマーケットだ。

 たとえリッツ・カールトンが開発運営するホテル・レジデンスでも、その高額な家賃を払える層があまりにも少ない場合は、投資は見送ったほうがいい。

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。