安いニッポン 売られる日本#12Photo:Rattanakun Thongbun/EyeEm/gettyimages

「給料安過ぎ問題」を抱える日本。この国を生きるビジネスパーソンにとっての処方箋の一つが、グローバル水準の給料がもらえる外資系企業に転職することだ。しかも50~60代のシニア層にもチャンスが潜んでいる。特集『安いニッポン 買われる日本』(全24回)の#12では、「世界標準の給料のもらい方」を二つ紹介する。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

外資転職で年収3割アップ
50~60代のアラ還世代も挑戦余地あり

 自動車もハイテクも水面下――。本特集では、日本の主要業界の給料が、グローバル比較では低水準であることをレポートしている(関連記事#2『トヨタ・ホンダ・日産に待ち受ける「安月給地獄」、自動車“勝ち組論”に待った』、#5『野村総研は年収1200万円でも…日本の「御用聞き」ITベンダーの給料が安い根本理由』)。

 これに対して本稿で紹介するのは、日本人ビジネスパーソンが「世界標準の給料」を勝ち取るための処方箋だ。

 大きく分けて二つある処方箋のうち、まずはより難しい方から触れよう。海外での就職・転職だ。

 中でも注目度が高いのはシンガポールだ。近年、節税目的で移住する日本人富裕層が散見されるが、中間層にとってもシンガポールは高収入を得る場として魅力がある。シンガポールにはグローバル企業の地域統括本部が集中しており、アジアにありながら世界に直結したキャリアが望めるのだ。

 このため日本から大手企業駐在員として派遣された人の中には、帰任命令が出たタイミングで、在シンガポールのグローバル企業へ転職を試みる人が一定数いる。

 キャリア転職組だけではない。海外求人に強い人材紹介サービスのジェイエイシーリクルートメントによると直近では、日本の有名私立大学の新卒者がグローバル企業のシンガポール法人に、月給5000シンガポールドル=約40万円で採用されたケースがあった。

 ひところ、中国のファーウェイ(華為技術)の日本法人では理系大卒初任給が40万円だということで注目を集めたが、それと遜色ない水準だ。

 しかもこの新卒者の職務は日本の顧客向けのカスタマーサポートで、使用言語は日本語が中心という。英語圏のシンガポールで働く場合でも、職種によっては必ずしも高いレベルの英語力が求められるわけではないのだ。

 ただしこの魅力あるシンガポール転職・就職には、無視できない大きな関門がある。

図版:こんなにもらっているグローバル企業(SAMPLE)