実は、上記のチェックリストは、すべて、クレーム対応において「やってはいけないこと」です。
もし、1つでもチェックを入れていたら、あなたは、悪質なクレーマーのワナにはまり、対応が延々と長期化したり、心が折れてしまったりする可能性があります。
はじめに
私は1995年、39歳のときに大阪府の警察官から民間の大手流通業(スーパーマーケット)に転職し、クレーム対応や危機管理に従事しました。そして、2002年、クレーム対応専門のコンサルタントとして独立しました。
刑事時代、警察署近くの飲食店や商店の主人から、クレームの相談を受けることがありました。
当時、私は、このように告げていました。
「具体的な金銭の要求がなければ、事件ではありません」
「もめごとや民事の問題に、警察は直接介入しません」
「毅然と対応し、不当な要求は断ってください」
しかし、スーパーマーケットで勤め始めてから、「毅然と対応する」ことがどれほど難しいことかを、私は身をもって体験することになりました。昼夜を問わずかかってくる携帯電話の呼び出しに汗をかきながら、必死でノウハウを積み重ねました。
その後、独立して20年間近く、企業や店舗、病院、学校、役所など、100業種以上にのぼる組織・団体で、クレーム対応の講演やセミナー講師を務めてきました。
同時に、顧問契約と単発の依頼を含め、クレーム対応やトラブルに悩む方々をリアルタイムでフォローし続けています。常時携帯電話を持ち、電話口やメールでのアドバイスを行なうほか、クレーマーと直接対峙することもあります。これまで、解決に導いてきたクレーム相談は、5000件をはるかに超えます。
こうした活動を通じて痛切に感じることは、世の中に、自己中心的でなかなか納得しないクレーマーが日々増殖し、社会環境が悪化していることです。
クレームとは本来、お客様から頂戴する「ご意見・ご指導・ご要望」です。しかし、現代社会においては、サービスを受ける側は便利さに慣れているため、少し待たされることすらも許容できないなど「我慢のできない人」が増えています。
サービスを提供する側が顧客満足(CS=Customer-Satisfaction)を追求すればするほど、便利な世の中になればなるほど、「満足」のハードルは高くなり、不満を感じる人が増え、些細なことで怒りを爆発させる「モンスタークレーマー」が増加するという図式があるのです。
理不尽なクレーマーの言い分を聞きながら、先が見えない中で対応する現場の苦労と疲弊は、想像を絶するものがあります。
やがて、無力感とストレスで担当者の心が折れてしまい、負の空気感が退職の連鎖を招き、クレームを原因とした「人手不足倒産」に至る企業も実際に増えています。