全業種対応・全クレームを断ち切る
「完全撃退マニュアル」

 かつて、私は「マニュアル無用論者」でした。

 多くの企業で、過去の事例などを元にした「クレーム対応マニュアル」がつくられ、なかには、想定問答集などを含めた数十ページにわたる立派なものもあります。

 しかし、必ずしも有効活用されているわけではありません。

 なぜなら、過去の事例に則ったマニュアルに頼りすぎてしまうと、そこに書かれていないことに対応できない傾向があるからです。また、クレームが発生した現場でマニュアルの該当ページを探している暇などありませんし、分厚いマニュアルの内容を全て頭に叩き込んでおくのも、現実的ではないでしょう。

 しかし、前述したような社会の流れの中で、クレームの最前線に立ち続けてきた私は、あらゆる業種の、あらゆるクレームに対応し、理不尽な要求を断ち切る「完全撃退マニュアル」の必要性を感じるようになりました。

 私の元に相談に来られる方の業種は、実に多種多彩です。金融、食品製造、輸入品販売、ネットサービス、小売、自動車製造、出版、リースから、通信機器、医薬品、建設・道路舗装、不動産。果ては鉄道、電力などのインフラ関係、厚生労働省、経済産業省、商工会議所などの行政・公共団体まで、さまざまな業種にわたります。

 つまり、あらゆる「仕事の現場」がクレームに悩まされているということです。

 そこで本書では、個別状況にしか対応できない対症療法的な対策ではなく、私の20年の現場経験で培ったスキルを総動員し、全てのクレームに通じる「原理原則」を、45以上の事例を紹介しながら余すところなくお伝えします。どんな業種でも、どんな種類のクレームでも、本書のポイントを理解しておけば乗り越えることができます。

 また、緊迫したクレーム対応の現場に臨むには、技術以外に「心構え」が大切です。とりわけ、「お客様」と「クレーマー」を見極め、「理不尽な要求を断る勇気」を持ってもらうためのマインドセットについても、随所に盛り込みました。

 すべての従業員が本書の内容を理解・実践し、現場の不安が解消されれば、組織に一体感が生まれ従業員満足度が高まり、離職率の低下につながります。クレーム対応という「危機管理」を盤石にしてこそ、「顧客満足」を追求する体制が整うのです。