エクセルマクロのコツは「全部を学ばない」こと
――たしかに、世の中には「エクセル作業を効率化したい」「ミスを減らしたい」と思っている人は多いと思います。一方で「エクセルマクロって難しいでしょ!」「マスターするには時間と手間がかかる」と思っている人も多いように感じます。その点は、どのように克服すればいいでしょうか。
寺澤:エクセルマクロを勉強するとき、一番よくないのが「全部を網羅的にマスターしよう」とすること。これはものすごくたいへんなうえに、ほぼ不可能です。
でも『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』にも書きましたが、エクセルマクロで覚えるべき機能なんて、マクロでできること全体の1割に過ぎません。マクロの1割マスターすれば、仕事の9割はこなせてしまいます。必要のない膨大な知識を学ぼうとして、やる気も時間も無駄にしてしまうのは非常にもったいないですよ。
だから、とにかくこの本では「仕事で使うにあたって必要なことを厳選している」という点が大きな特徴です。細かい知識の量よりも、普段の業務をするために必要な知識があるかが重要です。
さらにこの本の構成は、最後まで一通り読んでから何かできるようになるのではなく、一つ章を終えたら、一つできることが増えるようになっています。そうやって読んでいる途中からどんどん使えるように工夫しました。読みながら、学んだことを現場で実践してみてください。
――読んでいる途中から、どんどん実践できるのはいいですね。
寺澤:本書の目的は「エクセルマクロを網羅的に学んで欲しい」ではなくて「ちょっとでもいいから、現場でマクロを使って欲しい」です。
なので、一つでもいいからマクロの機能を身につけたら、ぜひ現場で使ってみてください。学んだことは、活かしてはじめて学びに価値が出ます。もちろん現場で利用しなければスキルは伸びませんし、知識がいくらあっても使わなければ何の意味もありません。
エクセルを使っている人は何百万、何千万人いると思います。ただ、そのなかで実際にマクロを作成したことがある人は2割程度だそうです。ぜひ、この本を読んだ人には、その「2割」になって欲しいと思っています。
――なるほど。読んでいる途中から、すぐさま実践できるのはいいですね。どんどん先に進みたくなります。
寺澤:本書を読みすすめるうえで一つだけ注意があります。前の項目でわからないところがあれば、そこを繰り返して、自分なりに理解してから次に進むという点です。「前の項目をふまえて、その次の項目が説明される」という構造になっているので、そこは意識してもらいたいです。
でも、そこだけ注意してもらえたら、一つマスターするごとに、エクセルマクロでできることが増えるので、ラクに楽しく学べます。即座に現場で使えるのはすごく学び甲斐を感じてもらえると思います。
そうすると「自分の仕事をもっと改善してみたい」という好奇心や「自分の仕事にマクロをどうやって使うか」という想像力が湧いてきます。その結果、仕事への取り組み方が変わり、時間の余裕ができるはずです。ここまでくれば、エクセルでの作業以外の仕事にも良い影響が生まれていくでしょう。その結果「マクロを知って人生が変わった」と思ってもらえると嬉しいですね。
【大好評連載】
第1回 めんどうなエクセル仕事から解放!「一瞬」で「ミスなく」作業が終わるエクセル効率化の秘訣とは?
第2回 「エクセル仕事」を見れば「ただ真面目」か「優秀」なのかがわかる理由
第3回 「エクセルやマクロを使いこなせない人」に欠けている視点とは?
1976年、大阪府生まれ。灘高校、東京大学経済学部卒業後、日系メーカーで17年間勤務。経理や営業、マーケティング、経営企画などに携わり、独学で覚えたエクセルマクロを用いて様々な分析や業務改革を行う。2017年、GAFAの日本法人のうちの1社へシニアマネージャー(部長)として転職。これまでエクセルマクロを用いた業務改善などで数多くの社内表彰を受けている。手作業では不可能なほど大量のデータを、短時間で分析しやすく加工したことが評価され、社内エクセルマクロ講習会の講師として延べ200人以上に講座を実施。エクセルマクロについて1から10まで教える詰め込み型の学習ではなく、仕事に必要な部分だけを効率的に学べる講座として満足度98%の高い評価を受けている。