アメフトの名将に叩き込まれた、
「弱者」が勝つ最強の戦略とは?
そんなふうに考えた背後には、私が所属していた京大アメフト部の名将・水野弥一監督の存在があったように思います。
水野監督の指導は非常に厳しいものがありました。練習ひとつとっても、プレッシャーなく、楽しく気軽にプレイをするようなことは一切やらせてくれません。ひたすら、泥まみれになりながら、地べたを這いずり回るような、本番の試合以上のプレッシャーのなかでの練習を徹底的にやらされるのです。
当時は、それが苦しくてなりませんでした。
しかし、それには京大アメフト部が勝つための、きわめて合理的な理由があったのです。ライバル校は「アメフトのエリート選手」を集めていますから、そんなエリート選手を相手に、受験勉強ばかりやってきた京大の選手が、楽しく気軽に華麗なプレイをして勝てるということはまずありません。だから、そんな練習をやることには意味がないのです。
では、「弱者」である京大が勝つ方法は何か?
身体能力と技術に優る「エリート選手」に食らい付いて、その華麗なプレイを封じ込めることです。そして、泥沼のような苦しいゲームに引き摺り込む。それに成功したときに、初めて勝機が生まれる。だからこそ、水野監督は、僕たち選手に地べたを這いずり回るような過酷な練習と本番以上のプレッシャーを強いたのです。
そして、僕は営業マンになってから、自分の無力さをさんざん思い知らされてきました。それに、プルデンシャル生命保険で「日本一」になったところで、自分が無力な存在であることは変わりません。であれば、そんな「弱者」である自分が勝機を掴むためには、地べたを這いずり回るような仕事をするほかない、と思いました。それこそが、水野監督に叩き込まれた「弱者の戦略」だったのです。
だから、僕は、2年目以降も“寝袋生活”を継続することを決意。1年目と同じように、とにかくお客様にアプローチする「母数」を増やすとともに、「目先の売上」を追うのではなく、一人ひとりのお客様に信頼されるという「資産」をコツコツと蓄積することをやり続けました(もちろん、そのやり方をブラッシュアップし続けましたが、やっていることの本質は同じでした)。
その結果、2年目も個人保険の前年度基準では再び日本一の結果を出すことができました。さらに、3年目も“寝袋生活”を続け、卓越した生命保険・金融プロフェッショナル組織MDRT(Million Dollar Round Table)の6倍基準である「Top of the Table(TOT)」に到達。これは、日本の生命保険募集人登録者、約120万人の中で毎年60人前後しか認定されない「狭き門」ですから、たいへん光栄なことでした。
紹介は「上から下」へ流れていく
ただ、3年目が終わったときに考えました。
この働き方を続ければ、「結果」を出し続けることはできる。その自信はついた。だけど、これは一生続けられる働き方ではない。アシスタントを雇っているわけではないから、日中は街中を走り回って商談をして、夜中まで全部ひとりで事務処理や資料作成をやって、寝袋にくるまって寝るという生活。そんな戦い方を、いつまでも続けてたらあかん……。そう思ったのです。
それで、戦い方を変えることにしました。
そして、「俺みたいにアホみたいに働かずに、結果を出し続けている営業マンは、何をやってるんやろ?」と観察してみると、すごくシンプルなことがわかりました。
要するに、彼らは「単価の高いお客様」に狙いを定めているのです。保険営業の商売というのは、小口の契約を100件お預かりするよりも、超大口の契約を1件お預かりするほうが「営業結果」がいいことだってあります。だから、彼らは「法人案件」や「相続案件」を多く扱っている。富裕層にアプローチをしているわけです。
しかも、保険営業の“命綱”である「紹介」は、「上から下」に流れていくものです。例えば、経営者の「信頼」を得ることができれば、役員を紹介していただくことができ、役員の「信頼」を得ることができれば部長に、さらに課長、一般社員へと紹介が繋がっていくイメージです。
つまり、影響力のある人物の「信頼」を勝ち取ることができれば、その影響力を“借用”することで、営業マンはお客様とのご縁をどんどん広げていくことができるわけです。