それまで、僕は、そういうことは考えずに、目の前にある「ご縁」を大事にすることだけに集中してきました。「単価の高いお客様」である富裕層にアプローチしているライバルに対抗するためには、睡眠時間を削って「母数」を増やすほかなかったのも当然のことだったのです。
そこで、僕も、経営者をはじめとする「富裕層」にアプローチする戦い方を採用しようと考えました。
もちろん、ご縁があってお目にかかった方であれば、たとえ「単価」が低くても、これまでどおり誠意をもって対応します。だけど、そうしたお客様を対象としたインターネット保険のサービスも広がってきていましたから、フルコミッションの営業マンである僕が積極的にアプローチする必要はないだろう。これからは、「富裕層」へのアプローチに集中していこうと意識を切り替えたのです。
手を握りしめている限り、
「新しいもの」を掴むことはできない
ただし、その方法はまったくわかりませんでした。
それまでも、知人やお客様から紹介された方が、たまたま「社長だった」ということはありましたが、自分の力で「富裕層」にアプローチしたことはありません。そもそも、社長と巡り会うためには、どこに行けばいいのかもわからなかったのです。
だけど、いまの戦い方は続けられない。
なんとしてでも、新しい方法を見つけ出すしかない。
そう思った僕は、まず“寝袋生活”を手放すことにしました。
“寝袋生活”はきつかったのですが、その反面、これこそが僕の「安心材料」でもありました。“寝袋生活”で仕事量を最大化しておけば、絶対に「結果」は出せるという自信があったからです。だから、これを手放すのはけっこう怖かった。
でも、僕は、これまでの人生で「手放す」ことの大切さも学んでいました。
例えば、両親の事業が倒産したとき、僕は早稲田大学での楽しかった生活を手放しました。人間関係にも恵まれていましたから、それを手放すのは正直つらかった。でも、それを手放したからこそ、「受験に失敗したら、働くしかない」というプレッシャーを糧にして、京大受験に成功することができたのです。
TBSを辞めて、プルデンシャル生命保険に入ったときもそうです。TBSという恵まれた環境を手放して、自分を追い込んだからこそ、僕は「日本一の営業会社で日本一になる」という目標を達成することができたのです。
手を握りしめている限り、「新しいもの」を掴むことはできません。
何かを得るためには、まず何かを手放す必要があるのです。しかも、手放すものが大きければ大きいほど、得られるチャンスも大きくなる。そのことを、僕は実体験を通して学んでいました。
だから、“寝袋生活”という「安心材料」を手放すことで、きっと、自分は新しい戦い方を見つけることができるはずだと信じることができました。手放すのが怖いからこそ、手放すことに意味があるのです。そして、手放すからこそ、新しい可能性が拓けるのです(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。