「統制」しようとするから、
管理職は「失敗」する

 では、「良い状態」とはどういう状態でしょうか?

 メンバー一人ひとりが組織目標を達成することに強い意欲をもち、チームワークを発揮しながら「自走」する状態です。人間がパフォーマンスを最大化させるのは、自身の内発的なモチベーションに突き動かされて仕事に邁進するときですから、そのようなモチベーションを引き出して、チームワークを生み出していくことこそが、管理職の最大の職務なのです。

 そして、モチベーションの源は各人の「内面」にしか存在しません。

 どんなに強権を発動して、メンバーのモチベーションを「統制(コントロール)」しようとしても、そんなことは不可能。人間は誰かに強制されて、モチベーションを高めることができるような存在ではありません。これこそが、「モノの管理」と決定的に異なるポイントなのです。

 だから、管理職にできることは、コミュニケーションを通じて、メンバー一人ひとりのモチベーションの在り処を探し当てて、それを最大限に発揮してもらえるように働きかけることだけ。それこそが、各人が置かれた状況に応じて、あるいは、チームが置かれた状況に応じて、「良い状態」を生み出すために「適切な手立てを講じる」ことなのです。

 もちろん、そのような状態を生み出すには、それなりの時間と労力はかかります。時には、メンバーを統制して、無理矢理にでも行動させるほうが効率的に思える局面もあるかもしれません。

 しかし、一見遠回りのように見えるかもしれませんが、管理職とメンバー各人との間で、そのようなコミュニケーションを成立させて、メンバーのモチベーションを最大化することができたとき、管理職には絶大なパワーが与えられます。

 強い意欲をもつメンバーが力を合わせることで、管理職がなかば放っておいても組織目標を達成してくれるチームが生まれるからです。「自走力」のあるメンバーたちが事業を引っ張っていくようになるので、管理職はメンバーの仕事に関与する時間と労力を大幅に削減することができるようになります。

 その結果、メンバーを管理するために「職場」に縛り付けられる理由がなくなり、リモート・マネジメントも難なく行うことができるようになる。これこそが、私が提案する「課長2.0」のあり方なのです。

 このように言うこともできるでしょう。

 “入り口”を間違えると、絶対に「課長2.0」には行き着かない、と。

「管理」という言葉を、「ある規準などから外れないよう、全体を統制すること」と理解している限り、「課長2.0」に辿りつかないばかりか、リモート環境下では「リモハラ」へと行き着いてしまうことになるでしょう。

 そうではなく、「管理」という言葉を「チームが良い状態を保つように、適切な手立てを講じる」と理解するのが、「課長2.0」に至る正しい“入り口”なのです。そして、丁寧なコミュニケーションを取りながら、一人ひとりのメンバーの自発性を引き出していくのには、それなりの手間と労力がかかりますが、それは、「課長2.0」を実現するために必要不可欠な「投資」と考えるべきなのです(詳しくは『課長2.0』をご参照ください)。