某大手金融機関に勤めていた著者は、40歳で早期リタイアを考え始めた。その10年後、資産1億円を達成。FIRE(経済的自立と早期リタイア)を実現した。著書『【エル式】 米国株投資で1億円』では、FIREの原動力となった米国株投資を全公開。年代別の投資指南や最強の投資先10銘柄に至るまで、“初心者以上マニア未満”の個人投資家に即役立つ投資法を徹底指南する。
米国ETF(上場投資信託)で
FIREを目指す方法
●初期投資:500万円
●毎月投資額:3万円、5万円、7万円
●期間と目標金額:20年間で4000万円、5000万円、6000万円、1億円
「FIRE」という言葉をご存じの方も多いでしょう。
「Financial Independence,Retire Early」の頭文字を並べたもので、「経済的独立を果たした早期リタイア」を意味します。
一般的な早期リタイアでは、私と同様に50代での退職を標榜する方が大半ですが、「FIRE」では多くが30~40代での早期リタイアを目指しています。
「FIRE」はアメリカで注目された生き方ですが、若いうちに企業で懸命に働きながら、株式投資などでまとまった資産を築き、その後は企業や組織に縛られない自由なライフスタイルを選択するものです。
日本でも「FIRE」に憧れる若い世代が増えています。
その基本プランは、年間支出の25倍の資産を築いたら、あとはそれを年利4%で運用していくというもの。
投資が特別なことではなく、生活の一部になっているアメリカならではの発想です。
この4%という数字は、S&P500の年平均利回りを7%(2000年のITバブル崩壊と2008年のリーマンショックを除くと、6~9%の範囲内に収まっています)として、そこからアメリカの年平均インフレ率3%(2000年代以降、アメリカのインフレ率は、おおむね2~3%台)を差し引いたものです。
国税庁の『令和元年分民間給与実態統計調査』によると、いわゆるビジネスパーソンで1年を通じて勤務した給与所得者5255万人の給与階級別分布を見ると、年収300万円超400万円以下がもっとも多くて全体の17%、その次に多いのは年収200万円超300万円以下で全体の約15%となっています。
この2つを合わせると32%であり、ビジネスパーソンの3分の1は年収200万円超400万円以下ということになります。
仮に年収300万円だと手取りは240万円ほど。月々の支出は20万円となります。
大都市圏で家族持ちだと厳しい金額ですが、独身で慎ましく暮らしていくというライフスタイルを貫けるなら、月20万円でもなんとかやっていけるのではないでしょうか。
家族持ちでも、ダブルインカムで同世代の夫婦2人が「FIRE」を目指すなら、世帯年収は手取り480万円、月々の支出は40万円と倍増しますから、子どもが2人いても平和に暮らせるでしょう(以下は独身でシミュレーションを進めます)。
年間240万円で幸せに暮らせる自信があるなら、240万円×25=6000万円が目標金額となります。
その4%は240万円ですから、年利4%で運用できたら資産を切り崩すことなく「FIRE」が可能になる計算です。
こうした前提に立ち、20代が20年後に「FIRE」するための金融資産を、ETFで築くためのシミュレーションをしました。
目標金額は6000万円に加えて、もっと少額で暮らす自信がある人のために4000万円(想定年間支出160万円)と5000万円(想定年間支出200万円)、リタイア後にもっと余裕のある生活がしたい人のために1億円(想定年間支出400万円)という合計4つのコースを考えてみます。
まずは前回のケース1と同じく、初期投資ゼロで毎月3万円、5万円、7万円を投資し続けるという仮定で、「金融電卓」を叩いて、目標金額に届くための年平均利回りを計算してみました。
結果は上記の通りです。
シミュレーションをしてみると、初期投資ゼロでいちばん実現性が高いのは、月々7万円の投資で、20年で4000万円を貯めるパターン。
それでも7%台後半ですから、ETFで叶えられると楽観しないほうがいいでしょう。
20年で6000万円をターゲットにすると、月々7万円でも約11%の年平均利回りが求められます。
短期的にはETFでも可能ですが、それが20年間続けられる保証はありません。
そこでケース2では初期投資をきちんと貯めてから、「FIRE」を目指します。
米国株投資は貯金ゼロからでも始められますが、ETFで「FIRE」を目指すなら初期投資は用意したほうがいいと思います。
初期投資のためにいくら用意できるかには、個人差が大きいでしょう。
厚生労働省『2019年 国民生活基礎調査』によると、世帯主の年齢別に見た1世帯当たりの平均貯蓄額は29歳以下では約180万円となっています。
今回はもう少し頑張って資金を貯めて、初期投資500万円を用意すると仮定してみましょう。
毎月3万円、5万円、7万円を投資し続けたら、目標金額に届くためにはどんな利回りが求められるでしょうか。
20代で500万円貯められるなら、月々7万円の投資が可能な人もいるでしょう。
それなら年7.5%の利回りで20年後、6000万円に到達します。
ETFで運用利回り年利7%台半ばとちょっと背伸びするなら、ケース1でも登場している2つのETFを活用します。
【ケース2のおすすめ米国ETF】
・「バンガード・S&P500ETF(VOO)」×80~90%
・「パワーシェアーズQQQ信託シリーズ1(QQQ)」×10~20%
ベースとなるのは、過去5年間の運用実績が年利10%を超えているVOOです。
これに、より高いリターンが望めそうなQQQを加えます。
組み合わせの割合は「VOO:QQQ=8~9:1~2」。
GAFAMのようなIT企業の成長力を信じているなら、「VOO:QQQ=8:2」としてもいいでしょうし、より保守的に考えて「VOO:QQQ=9:1」とするのも悪くないと思います。
同じく毎月7万円投資できる人で、20年後に4000万円か5000万円を目指すなら、平均利回りは年利5~6%台でOK。
4000万円なら毎月5万円の投資でも同様です。
これらはケース1と同じようにプランA(VOOに100%投資)かB(VDC、VHT、QQQに分散投資)で達成できるでしょう。