万一のための保障(保険)がありながら、投資のメリットも期待できると人気化している変額保険と、かつての人気商品の外貨建て保険。だが、「保障付き」の看板のパワーで投資信託をはるかに上回る高コスト商品となっている。特集『株投資 入門&実践』(全18回)の#6では、その実態を解説する(ファイナンシャルプランナー 深野康彦)
変額保険と外貨建て保険
保障と運用の「一石二鳥」は幻想
変額保険や外貨建て保険で資産運用を行っている人は、いまだ「一石二鳥」という幻想を追っている気がしてならない。あるいは金融機関などの販売者もそう信じているのであれば、たちが悪い冗談と言わざるを得ない。
変額保険や外貨建て保険は、死亡時の保障を確保しつつ、同時に資産運用ができることから一石二鳥だとうたう。投資信託を購入している投資家は、低コストの資産運用に専念し、怠りなくiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAなどの節税メリットを受けている。そうした個人投資家層と比べれば、運用効率には天と地ほどの差がついているのだ。
両保険共に死亡保障があるものの、実際の販売現場では、老後などに備える資産運用面を強調している。だが、投資性商品としての魅力はほとんどない。以下、その点について述べていこう。
変額保険は払い込んだ保険料を「特別勘定」と呼ばれる投資信託に類似した商品で運用する。保険(保障)としての細かな説明は割愛するが、国内外の株式や債券などに投資する特別勘定が複数用意されている。加入者は自身の相場観などに基づいて特別勘定を組み合わせて(ポートフォリオを構築して)運用していく。組み合わせることが面倒であれば、複数の資産を組み合わせて運用される「バランス型」も用意されており、困ることはない。
変額保険といえば、アクサ生命保険の「ユニット・リンク」やソニー生命保険の「バリアブル ライフ」などが売れ筋商品だ。ここでは、ユニット・リンクを例に見ていくことにしよう。
ユニット・リンクは国内外の株式や債券の他、バランス型を加えて10本の特別勘定が用意されている。株価指数などに連動するインデックス型もあるが、主流は指数を超える運用の成果を目指すアクティブ型だ。ラインアップにけちをつけるつもりは毛頭ないが、投資信託と比較できないように運用スタイルの名称を少し変えることで、同じ投資商品が存在していないと思わせるように仕向けている気がしてならない。
どうせなら、この変額保険でなければ運用できない特別勘定があれば価値が上がると思われるが、「適格機関投資家用(限定)あるいは同(私募)」とあるだけだ。この文言が特別感を出しているのかもしれないが、資産運用をきちっと考えている人の琴線に触れるとはとても思えない。
次ページ以降では、商品性が近い投資信託と比較するのに加え、変額保険や外貨建て保険がいかにコスト高の商品なのか、本当に資産形成に役立つのかについて検証していく。