私たちの生活には、いろいろなところで神様の存在を感じられることがあります。身近なところでは、「初詣」。受験生なら「合格祈願」。ビジネスパーソンなら「商売繁盛」。名だたる経営者も、日本の歴史をつくった戦国大名や歴代天皇も、神様を信仰し、力を借りて成功を収めてきました。漫画やゲームのキャラクター名でつかわれていることもあります。もしかしたら、ヒットの要因は、神様のご利益かもしれませんね。
日本には、八百万(やおよろず)の神様がいると言われています。膨大な神様の中から100項目にわたって紹介する新刊『最強の神様100』には、古代から現代まで、めちゃくちゃ力のある神様が登場します。最強クラスの神様なので、ご利益も多種多様。
今回紹介する神様は、ヒルコ。七福神のひとり、えびすさんでもあります。ヒルコを祭る西宮神社を崇敬したのが、戦国大名・三好長慶。群雄割拠の戦国時代にその名を轟かせました。

関西在住なら一度は行っておきたい兵庫一の神社Photo: Adobe Stock

捨てられた子は拾われて
商売繁盛の福の神に

関西在住なら一度は行っておきたい兵庫一の神社ヒルコ
イラスト/朝倉千夏

 えびす顔といえば、七福神のエビスのように、目を細めてうれしそうに笑っている表情ですが、そんな喜びの象徴がヒルコ(蛭子)です。とはいえ、ヒルコの神話は一般的な意味で不幸なことが起きます。古事記では、イザナミとイザナギの最初の子ですが、神とは認められず、船に入れられて島から流されてしまいます。捨て子ですね。

 日本の神様のパターンですが、神様が味わったネガティブな経験は、ポジティブな意味にひっくり返ってご利益になります。不幸な体験をした神様だからこそ、ヒルコのご利益は「幸せになること」「笑顔で喜びをもって生きること」なのです。

 日本書紀でも、ヒルコは生まれて3年経っても足が立たなかったため、やはり船に乗せて流されました。これで古事記・日本書紀でのエピソードは終わりですが、後世、新たな物語が続きます。流されたヒルコはどうなったのか?

 西宮(兵庫県西宮市)に漂着します。漂着したヒルコは拾った人々に「夷三郎(えびすさぶろう)殿」と称され、一般庶民の手によって、西宮神社が創建されました。えびす神社の総本社です。捨て子のヒルコは、庶民の幸せを願う神様となったのです。

 西宮神社を崇敬した戦国大名・三好長慶は、足利将軍家・細川管領家を追い落として室町幕府の実権を握り、後世の学者が「三好政権」と呼ぶ天下人になりました。

「エビス講」は酉の市に並ぶ商売繁盛のお祭りです。中世に商業が発展すると、「商売繁盛の神」「福の神」として信仰され、七福神の一柱になりました。

 日本の多くの神様は天皇や貴族、武士のためのものですが、ヒルコは最初から一般庶民のための神様で、とりわけ大事にしましょう。

【主なご利益】開運招福、商売繁盛、身体健全

【こんな人にオススメ!】
我こそは、庶民と思う人

*本原稿は、八木龍平著『最強の神様100』からの抜粋し、再編集したものです。