秋田県の大学進学率が低い理由とは
最後に大学進学率について少し考えたい。実は、秋田県は、同じく全国学力・学習状況調査で上位県の石川県、福井県に比べると大学進学率が低い。2020年の大学進学率は45.0%、全国でも6番目の低さである(注1)。しかし、秋田県の子どもたちは、高校進学後に学力を下げているわけではない。
秋田県の大学進学率の低さには、二つの理由がある。一つは、各都道府県の1人あたりの平均所得との関係である。秋田県の大学進学率の低さは、各都道府県の1人あたりの平均所得が連動している。大学進学率と各都道府県の平均所得との相関係数は約0.6とその相関がみてとれる(注2)。
日本はOECD加盟国の中で、対GDPの公費による教育費の支出が極めて低い。その分、私費つまり各家庭が負担する教育費がかなり多くなっている。そのため、各家庭の収入が大学進学率に連動するかたちになっているのだ。
もう一つは、各都道府県にある大学の数と大学進学率の相関だ。大学が多ければ多いほど、大学進学率も高くなる傾向にある。これは前述した平均所得とも関係するが、自宅から通える距離に大学があることが重要なのだ。
秋田県の子どもたちの多くが、小学生・中学生のころから「将来の夢」を持っている。これは全国でも小・中ともにもっとも高い割合である。

将来への夢を持っている子どもたちが、各家庭の所得や地域にある大学数によって大学進学がかなわないとしたら、これは問題である。
たとえばフィンランドは大学の学費が無料、その上学生たちに返還義務のない奨学金が支給される。日本がせめてOECD平均くらいの教育費の公費負担になれば、この状況はかなり改善されるだろう。
秋田県には、全国各地だけでなく海外からも数多くの教育視察が訪れる。高次の学力を育てる探究型授業、質の高い家庭学習、子どもたちの前向きな学習姿勢、さらには無回答率の低さなど、いずれもこれからの教育で目指すべき方向を示唆している。秋田県の教育は、これからの日本の教育のモデルの一つとなることは間違いない。
注2:注1の資料及び内閣府「県民経済計算(2018年度)」2021年をもとに算出
(秋田大学大学院教育学研究科・特別教授 阿部 昇)