死後の手続き お金の準備#13Photo:400tmax/gettyimages

故人のスマートフォンのロックが解除できない。便利なスマホでさまざまな取引が可能になったことで、故人の遺産を把握する難易度が高まっている。セキュリティーが厳重な故人のスマホを操作できず、換金できないデジタル遺品を巡るトラブルが今後増えそうだ。特集『死後の手続き お金の準備』(全16回)の#13では、デジタル遺品のトラブルとその解決法をお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

パスワードを知らない仮想通貨も
相続税の課税対象になる

 夫が亡くなり、悲しむ暇もなく遺産の分割や相続税の手続きなどを終えてようやく一段落。そんなときに、税務署から思わぬ一報が届く。

「故人はビットコインを保有していましたね。相続財産の申告から漏れています。相続税の追加の支払いが必要です」

 数年前に夫がビットコインに投資したと話していたことはおぼろげながら覚えているものの、パソコンやスマートフォンを処分してしまったため、どこで買ったか分からない。パスワードも分からず換金しようもない“財産”なのに、相続税を支払わなくてはいけないのか――。

 今年に入り急騰したビットコイン。一時は暴落したものの、足元では再び高値を付けている。仮想通貨に投資する人が増えたことで今、「デジタル遺品」の相続を巡るリスクが身近に迫っている。

 冒頭のような、パスワードも分からず換金できない仮想通貨の相続税を支払う必要があるのか。答えはイエスだ。実は既に税務当局の公式見解がある。

 2018年3月、参議院の財政金融委員会。政府参考人として答弁した藤井健志・国税庁次長(当時。現内閣官房副長官補)は、藤巻健史議員(当時)の質問にこう述べている。

「相続人が被相続人の設定したパスワードを知らない場合でも、相続人は被相続人の保有していた仮想通貨を承継することになるので、その仮想通貨は相続税の課税対象となる」

 パスワードを知らせず亡くなったため、仮想通貨を引き出せないと相続人が主張したとしても、「パスワードを知っている、知っていないというようなパスワードの把握の有無は、当事者にしか分からない、いわば主観の問題だ。課税当局としては、本当のことをおっしゃっているのかどうか、その真偽を判定することは困難。従って、相続人から『パスワードを知らない』という主張があった場合でも、相続税の課税対象となる財産に該当しないと解することは課税の公平の観点から問題があり、適当ではない」(藤井氏)。

 仮想通貨をはじめとするデジタル遺品にはどんなトラブルのリスクがあり、どう回避すればいいのか。