老後の資産運用では“守り”が重要だ。株式相場の下落は、収入がある現役時代ならば投資のチャンス。しかしリタイア後は“資産枯渇”のリスクを招くからだ。それではどの程度、守りに配分すべきか。特集『死後の手続き お金の準備』(全16回)の#7では、「資産寿命」を延ばす投資テクニックを伝授する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
老後の資産運用は「守り」が大事
最適な配分をどう見つける?
「リタイア後はリスクが取りづらくなることをコロナショックで思い知りました。資産が目減りすることがこんなにも怖いなんて」――。
こう振り返るのは、大手メーカーの元社員だった坂本陽太さん(仮名、67歳)だ。再雇用の期間も終わった2019年、収入が激減して預金通帳の額がどんどん減っていくことに危機感を覚え、退職金の一部の600万円を、息子の薦めもあって米国株インデックス「S&P500」に連動する投資信託に投資した。
当初相場は右肩上がりで、含み益は60万円を超えた。ところが20年春のコロナショックで相場は反転、一気に含み損へと突入した。このままではまずいと、購入時よりも1割弱安い価格で“損切り”を決断。50万円程度の損失を出してしまった。
投資信託の売却後、相場はさらに下落。“大底”は回避できたと安堵して息子と連絡を取ったところ、「安くてチャンスだから買い増したよ。おやじも買えばいいのに」と応じられてあぜんとした。
その後のコロナ相場の“好景気”は指をくわえて見ているしかなかった。「チャンスを逃してもったいなかったね」との息子の気軽な言葉に、どうすればよかったのかと煩悶する日々だ。
老後の資産運用は、債券などの比率を高めた「守り」を意識することが大切だ――。多くのファイナンシャルプランナーに相談すればこう口をそろえて回答してくれるだろう。
それではどの程度、守りを意識した資産配分にすればいいのか。老後資金の何割を何に投資すればよいか。こうした具体的な話になると、自分に適した資産運用の答えを見つけることは途端に困難になる。
最適な守りのバランスを探り当てるために参考になるのは、「資産寿命」に着目して配分を考える投資テクニックだ。