相続税や贈与税の課税額に大きく影響するのが路線価だ。7月1日に発表された最新の路線価を基に、相続税の課税額が前年と比べてどれだけ変動したかを試算した。特集『死後の手続き お金の準備』(全16回)の#15では、関東地方の主要105駅のエリアで、相続税が上がったのはどこかをお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
全国の路線価は6年ぶりに下落
それでも相続税が上がったエリアは?
6年ぶりに「路線価」が下落した――。
国税庁が毎年7月1日に公表する土地の評価額である路線価は、相続税や贈与税を計算する基準だ。
相続財産の約4割を占めるのが不動産である。路線価の上昇は相続税の“増税”につながる。
例えば、JR南武線武蔵小杉駅から最寄りの第一種住居地域の路線価は、2015年は1平方メートル当たり35万円だったが、21年は41万円まで上がった。
これでどれだけ増税になるのか。自宅の敷地が150平方メートルで築25年の延べ床面積90平方メートルの木造住宅(固定資産税評価額200万円)と預貯金3000万円を、別居の子供1人が母親から2次相続したケースで試算してみよう(父親は既に他界、小規模宅地等の減額特例は不可)。
この条件での15年の相続税課税額は770万円なのだが、21年では1025万円となり、6年間で255万円増税されたことになる。
全国の路線価の平均は20年まで5年連続で上昇が続いた。とりわけ首都圏や大阪府、愛知県など大都市部での上昇幅が大きく、相続税の負担が増していた。
そんな中、国税庁が今年7月1日に発表した全国約32万地点の路線価の平均は前年と比べて0.5%下がり、6年ぶりの低下となった。
都道府県別では、静岡県が最も下げ幅が大きく1.6%低下するなど、39の都府県で前年と比べてマイナスになった。
また、東京都は1.1%、大阪府は0.9%といずれも8年ぶりに低下し、相続税の増加におびえる人には朗報だと感じるかもしれない。ただし、コロナ禍でダメージを受けたのは商業地域が中心だ。
例えば今回全国で最も路線価が最も高かったのは、東京都中央区銀座5丁目・中央通りの4272万円だったものの、前年と比べて7.0%も下がっている。これまでインバウンド需要を取り込み好調だった大阪市中央区の心斎橋筋は同26.4%減と、全国でも目立った落ち込みを見せている。
一方、前出の武蔵小杉駅の21年の路線価は、20年と比べて2.5%上昇。エリアによって路線価の変動は異なり、相続税への影響も変わってくる。
そこでダイヤモンド編集部は関東・関西地方の主要165駅の最寄りの住宅地について、21年の路線価に基づき、相続税額が前年と比べてどれだけ上昇したかを前出の条件で試算した。
今回は関東地方105駅の結果を見ていこう。
関西地方の結果は本特集の最終回『相続税が上昇した駅ランキング【2021年路線価・関西60駅】2位森ノ宮、1位は?』で紹介する。
関東地方で相続税額が上昇したのは、どの駅のエリアなのか。