私たちの生活には、いろいろなところで神様の存在を感じられることがあります。身近なところでは、「初詣」。受験生なら「合格祈願」。ビジネスパーソンなら「商売繁盛」。名だたる経営者も、日本の歴史をつくった戦国大名や歴代天皇も、神様を信仰し、力を借りて成功を収めてきました。漫画やゲームのキャラクター名でつかわれていることもあります。もしかしたら、ヒットの要因は、神様のご利益かもしれませんね。
日本には、八百万(やおよろず)の神様がいると言われています。膨大な神様の中から100項目にわたって紹介する新刊『最強の神様100』には、古代から現代まで、めちゃくちゃ力のある神様が登場します。最強クラスの神様なので、ご利益も多種多様。
今回は、「経営者が龍神を好む理由」についての書き下ろしになります。

経営者が「龍神」を好む理由【龍神にまつわるエピソード1】Photo: Adobe Stock

「せんたく」に隠された意味を知る

 龍神さん、ここ数年なぜか人気で、私も龍神ブームを起こした人間のひとりと言われることもあります。本名に「龍」の字が入っているので、子どもの頃からずっと親近感を感じていました。

 神様の中でも特に龍神を好む経営者が多いのは「昇る」から。空を翔け天に昇る龍神は、社運や業績が「右肩上がり」になる様子をあらわしています。

 せっかくなら、「上昇」したいですよね。龍神は「りゅう」と読む漢字のはたらきの多くをあらわします。流、粒、立、隆など。立つ流れ、隆起する流れなどです。

 出雲神話で有名な龍神ヤマタノオロチは、島根県の斐伊(ひい)川です。これはつまり、「川の流れ」ですね。スサノオのヤマタノオロチ退治は、斐伊川の氾濫を治めた「治水」をあらわしていたわけです。

 龍神のはたらきは、神話だけでなく、古代の昔話にもあります。たとえば、桃太郎です。

 桃太郎の冒頭はみなさまご存じでしょう。

「昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。毎日おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました」

 この話、実は「運が開く仕組み」をあらわしています。川の流れ(龍神)で「せんたく」すると、桃という「想像外の良いこと」がやってくるよという教えです。

「せんたく」は、選択、洗濯、宣託。「選択」とは決断すること、「洗濯」とはお掃除すること、「宣託」とはインスピレーションを得ることです。

 経営者は社運を賭ける決断をします。「これはいける!」「ここは引く!」と。この乗るか反るかの決断は、物事の「流れ」を感じ取りながらの、直感的な判断です。

「流れ」を感じ取るには、山へ芝刈りに、川へ洗濯に行く。もちろんモノの喩えで、どちらも余計なものを取る「禊(みそぎ)」「祓い(はらい)」のことです。禊・祓いにより心身を清らかにして、選択する。あるいは宣託する、つまりインスピレーションを受け取ります。

 すると、龍神さんが「桃」という予期せぬ幸運をもたらしてくれるでしょう!

*本原稿は、『最強の神様100』の著者・八木龍平氏による書き下ろしです。