「個人の目標」と似て非なる「会社の目標」

前回の第1章で「どんな会社でも目標(ザ・ゴール)はひとつしかない」と言われた主人公の吾郎はその答えがわからず頭を抱える。

会社の目標は「効率よく品質の高い製品をつくること」なのではないかと吾郎は考えた。

この目標に違和感を感じる人は多くないだろう。自分たちの技術力やものづくりへの情熱に自信がある人ほど、どこがおかしいのかわからないのではないだろうか。

もちろん、品質の高い製品を作るという目標は決して悪いものではない。しかし、それは製品制作の目標であって、会社の目標ではないところにポイントがある。

「会社の」目標は何だろうか。あらためて考えてみると答えがわかるはずだ。

それは「お金を稼ぐこと」である。お金がなければ社員の給料も払えず、会社は動かなくなってしまうからだ。

製品の質が高いことも、製造効率がいいことも、すべてはお金を稼ぐための手段である。

仮に効率よく品質の高い製品をつくることに成功したとしても、その製品が売れなければ会社は潰れてしまう。当たり前のことであるが、現場レベルではそのことを多くの人が忘れてしまう。

というよりも、目の前の業務に終われ、正しい判断ができなくなってしまうのである。

たとえば、あなたはパン屋の厨房担当で、1日の業務ノルマがパンを100個つくることだとしよう。すると、人はつい100個のパンを効率よくつくることを考えてしまう。

しかし、その100個は売れなければお金にはならない。それであれば、つくるパンを50個にして、販売に時間を割いたほうがいいかもしれない。

つまり、自分の仕事や取り組むべきことがどこでお金に変わるのかを意識しなければ、どんなに丁寧でいい仕事をしても、それは個人の結果であって、会社の結果につながらない。これだけで終わってしまうのは、あまりにもったいない。

前章で、生産性とは「目標に向かって会社を近づける行為」であると定義された。以上見てきたとおり、その会社にとっての目標とは「お金を稼ぐこと」なのである。

次回の第3章では実践編として「会社が稼げているかどうかを判断する3つの指標」について紹介する。