「ウーブン・シティのきっかけは2011年3月11日の東日本大震災。トヨタはその時、東北に生産を移管し東北地区をサポートする決断した。ウーブン・シティは、未来に向けた新しい価値を裾野市で生み出すことによって、この地域を活性化していこうとするものだ」と、カフナーCEOは語る。裾野市の東富士工場跡地に未来都市を建設することで、地元に貢献していくという姿勢を住民の前で打ち出した。

 また、高村市長も「裾野市として“SDCC(スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ)”という地域活性化プロジェクトを展開し、地元の産業や自然、デジタル技術を生かした街づくりでウーブン・シティとの融合を図っていく」とウーブン・シティとの連携に期待を寄せた。

 ウーブンとは「織り込む」の意だ。ウーブン・シティの狙いは、自動運転やAIなどの最新技術を駆使したモビリティの未来と、それを中心とするスマートシティを築くことにある。トヨタは、NTTなど300を超える異業種企業の参画によって、モビリティだけでなく健康やエネルギー、環境といったさまざまな社会課題をIoTでつなぎ、解決する新しいコミュニティーの構築を図る。

 あえてウーブン・シティの名前から「トヨタ」の冠を外しているのは、そうした異業種の取り込みや多角的な技術の発展に狙いがあるからだ。

 豊田章男社長は「ゼロから街を作り上げることは、街のインフラの根幹となるデジタルオペレーションシステムも含めた将来技術の開発の機会となる。もっといい暮らしと、モビリティ・フォー・オールを追求していきたい」と、自動車メーカーのトヨタが街づくりに挑戦する意義を語る。

 ウーブン・シティは、今年2月に着工したところで、現在造成など基礎工事を進めており、22年から建屋の工事に入る。

 構想は壮大で、地上には自動運転車の専用道と歩行者専用道、さらに歩行者と一人乗り自動運転車が共有する3本の道路を張り巡らせ、地下には物流用の道路を造る。25年頃に開業し、当初は高齢者と子育て世代、研究者などの「発明家」ら約360人が、将来的には社員ら2000人以上が住民となる予定だ。