今回のウーブン・シティに関する説明会でも、地元住民からは「ウーブン・シティができると、人流増加などで周辺の交通渋滞や治安の問題などへの不安がある」との声が上がっていた。また、ウーブン・シティの最寄り駅となるJR御殿場線の岩波駅周辺の整備についても質問が出るなど、不安はもっともだ。

 そうした不安を解消すべくトヨタが活用を試みているのが、基礎工事と並行して行っているウーブン・シティの「デジタルツイン」だ。デジタルツインとは、現実世界をデジタル上に再現し、シミュレーションなどに役立てる手法のこと。要は人やモノの流れといった街の課題をソフトウエア面から検討しているということだ。

 カフナーCEOは、「街としての問題を洗い出したり、調整したりできるのがデジタルツインのメリット。開発はソフトウエアファーストで進めていく」と、ソフトウエア活用の構想を述べた。また、「(事業の)透明性を確保し、地域の協力や信頼を得て貢献につなげたい」と、裾野市や住民との連携や協力を惜しまないことを重ねて強調した。

 もちろん、ウーブン・シティへの期待も強い。説明会に参加した地元の高校生の代表からは、「若い世代は、ウーブン・シティへの関心が高い。海外の研究者が行き来したりする先端技術による街づくりに、自分たちも積極的に参加していきたい」との声が寄せられた。

 あえてトヨタの名を外して進められているウーブン・シティが、閉ざされた空間にとどまらず地方創生に結び付き、さらにはグローバルな交流ができる最先端のモビリティが体感できる街となるか。その成否が大いに注目されよう。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)