「仕事ができる人は、一文が短い」「一文を60字以内にすれば、書き手も読み手もラクになる」。そう話すのは、コピーライターとして30年以上活躍し続ける田口まこ氏だ。花王、ライオンなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラなどの化粧品を中心に、多数の広告コピーを手がけてきた。その田口氏が、伝わる・結果が出る文章をラクに書くコツを紹介した『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』が9月29日に発売となった。メール、チャット、企画書、営業・プレゼン資料、報告書など、さまざまな場面に生きる、シンプルだけど効果抜群の文章術とは? 今回は、本書の内容を一部抜粋して紹介する。

コピーライターも使っている、印象に残る「魔法の数字」とは?Photo: Adobe Stock

人が短期間に覚えられるのは3~5個

「マジカルナンバー7±2」という法則をご存じでしょうか? 1956年にハーバード大学の心理学者ジョージ・ミラーが発表したものです。人が短期的に覚えられるのは7のプラスマイナス2の範囲(つまり5~9個)だというのです。

 さらに、2001年にはミズーリ大学の心理学者ネルソン・コーワンが、「マジカルナンバー4±1」を発表し、人が短期で覚えられるのは3~5個の範囲だと主張しました。なるほどと思える説です。人は、そんなに多くのことを一気に覚えられないのです。

「3」は世界共通のマジカルナンバー

 実際に何かをまとめて提示する場合、基準となる数字は「3」の場合が多いことに気づきます。スポーツをはじめ、どんなときでも順位は「トップ3」が基準です。また、「3大〇〇」や「御三家」といって、何かの分野で代表するものを紹介するときも「3」が基本になります。

 これは、日本だけではありません。「3大美女」「3大発明」など、世界的にも「3」が使われています。そのせいか国旗の多くも3色です。「3」は、世界共通のマジカルナンバーなのです。

「10大特長」と言われても、そんなにたくさんは1度で覚えられません。ルールや法則も、3つを超えると面倒くさく感じてやる気がおきないでしょう。雑誌やネット記事を見ても、「できる人の3つのメソッド」「この夏行きたい3大絶景ポイント」のように、「3」でまとめた見出しが多いのがわかります。

 この記憶に残る「3」という数字を、使いこなしましょう。たとえば、プレゼンや営業資料、履歴書の自己PR文などではポイントを3つに絞り、「3つのルール」「3大法則」「3つの強み」などと発信すると、相手の印象に残りやすくなります。

・本企画の3大ポイント
・リニューアルする3つのメリット
・新商品が売れる3つの理由
・私が貴社に貢献できる3つの理由

 ポイントを3つにするだけで結果が変わるのであれば、やらない手はありません。

(本原稿は、田口まこ著『短いは正義 ~60字1メッセージで結果が出る文章術』からの抜粋です)

田口まこ(たぐち・まこ)
コピーライター
京都府出身。京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)美学美術史学科卒業後、一般企業を経て、広告制作会社ライトパブリシティに入社、コピーライターとなる。大塚製薬「ポカリスエットステビア」「カロリーメイト」などを担当し、「ジャワティ」の雑誌シリーズ広告で、コピーライターの登竜門「東京コピーライターズクラブ新人賞」受賞。その後フリーランスとなり、女性向けの商品広告を中心に活動。ライオン、花王、P&Gなどのトイレタリー商品、資生堂、カネボウ、ポーラ、ランコム、フローフシ、ロート、ファンケルなどの化粧品のコピーを多数手がけ、現在も第一線で活躍中。コピーライター歴は30年以上。著書に『短いは正義』『伝わるのは1行。』(かんき出版)がある。東京コピーライターズクラブ会員。