自社株は様子が分かるので
投資しやすいが…

 投資初心者が最初に株を買うとき、自社株を考える人も多いのではなかろうか。愛社精神もあろうが、自社は様子が分かっているので、親しみがあって投資しやすい、こともあろう。

 しかし筆者は、自社株への投資はおすすめしない。一つにはインサイダー情報のリスクがあるからであるが、それ以上に重要なのは、勤務先の経営がうまくいかないリスクである。

 勤務先が発展すれば、ボーナスも増えて株価も上がるので素晴らしいだろうが、一方で勤務先が赤字になってボーナスが減り、株価も下がるというダブルパンチの可能性もあるわけだ。

 最悪の場合、勤務先が倒産すると、収入が途絶えると同時に株式も紙くずになるわけで、その後の生活に大いに支障を来す可能性も出てくるだろう。そんなリスクを負うのは怖すぎる。

 勤務先が非上場企業で将来の発展が見込まれるならば、従業員持ち株会などで投資するのも悪くなかろう。将来上場した時に株価が取得価格の10倍にも20倍にもなる可能性があるからである。ただし、その場合でも会社の倒産によって全てを失うリスクを考えて、金額は控えめにしておくほうがよいかもしれない。

 勤務先が上場企業なら、よほどの成長企業でない限りは株価が何倍にも値上がりする可能性は小さいだろうから、従業員持ち株会があったとしても、慎重に考えるべきだ。よほど優遇措置が取られている場合や、会社に愛社精神を示す必要がある場合には投資しても構わないだろうが、それでも慎重な姿勢は重要であろう。