日東駒専&産近甲龍#3・田中英壽氏Photo:JIJI

10月、日本大学付属病院の建て替え計画を巡って、東京地検特捜部が背任容疑で日大理事(辞職)を逮捕するという日大の闇が明るみに出た。2018年の日大アメフト「悪質タックル」事件を超える一大不祥事に、「日大ブランド」はどこまで失墜するのか。はたまた22年度入試や学生の就活への影響はいかほどか、特集『MARCH・関関同立に下克上なるか!?日東駒専&産近甲龍』(全19回)の#3で検証しよう。(大学ジャーナリスト 石渡嶺司)

3カ月後に迫る入試の志願者数や
学生の就活への影響を徹底検証

「受験動向に大きな影響が出るだろう」――。

 2018年にアメフト部の反則タックル騒動で批判された日本大学が再び揺れている。今度は巨額背任事件が発生、現役理事(後に辞任)が逮捕されたのだ。この一大不祥事に、ある日大教員は冒頭のごとく深いため息をついた。

 日大医学部附属板橋病院の建て替え工事を巡る背任容疑で、東京地検特捜部は10月7日、日大理事の井ノ口忠男容疑者と大阪市の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳容疑者を逮捕した。

 井ノ口容疑者は20年2月、同病院の建て替え工事の設計会社を選定する際、特定の会社がトップになるよう評価点を改ざん。その見返りとして、同社取締役に対し、着手金7.3億円のうち2.2億円を籔本容疑者が所有するコンサルティング会社に送金するよう指示し、大学に損害を与えたとみられている。

石渡嶺司・大学ジャーナリストいしわたり・れいじ/1975年札幌市生まれ。大学ジャーナリスト。東洋大学社会学部社会学科卒業。教育問題、就職活動を主なテーマとし、日大問題ではメディア出演など精力的に活動する。『大学の学科図鑑』(SBクリエイティブ)、『就活のワナ あなたの魅力が伝わらない理由』(講談社+α新書)など著書多数。

 日大は井ノ口容疑者の逮捕翌日に臨時理事会を開催し、理事辞任勧告を決議した。解任ではなく辞任勧告とした理由について、「被疑事実は、令和2年2月から7月までの間の日大事業部の取締役としての業務に関する背任行為」であるため、と日大ホームページに掲載されたプレスリリースに書かれている。背任を行った期間は理事ではなかった、というわけだ。10月19日、日大常務理事会が開かれ、井ノ口容疑者から提出された辞任届が受理された。

 この事件を巡っては、建て替え工事の会社選定が従来の大学管財部ではなく、井ノ口容疑者が当時、取締役を務めていた「株式会社日本大学事業部」という日大100%出資の事業会社に委託されるなど不可解な部分が多く、逮捕者がどこまで広がるのか現時点でも見えていない。

 とはいえ、今年も11月に入り22年度の入試がすぐそこにまで迫る。

 まず、この前代未聞の不祥事は、どこまで長期化するのか。そして22年度入試や大学経営、ひいては日大ブランドにどんな影響を与えるのか?さらに、学生の就職活動への影響はあるのか。次ページから徹底的に検証しよう。