接客の基本は「お客さまへの感謝と敬意」

 先日、あるスーパーを利用したときのことです。ベテランの年配女性スタッフがレジにいました。

 以前から接客態度が気になるスタッフだったのですが、その日、私がレジに並んでいると「80円あるの? ないの? どっち?!」と強い口調でお客さまに詰め寄る彼女の声が聞こえてきました。

 驚いて目をやると、お財布から小銭を出そうとしている様子のご高齢のお客さまがレジにいるのが見えました。おそらく小銭を出そうとしてまごついてしまったのでしょう。

 もしかするとそのお客さまは常連で、そのような言い方をされてもご本人は気にしない人だったのかもしれません。

 しかし、それを聞いている周りにとってみると「なぜあんな言い方をするの?」「もう少し優しく聞けないものか?」「そもそもお客さまにタメ口とはいかがなものか」…。

 そのようなモヤモヤとした気持ちが湧き、強い口調で聞かれているお客さまに対して胸を痛めるとともに、とても残念な気持ちになりました。

 接客の基本は「お客さまへの感謝と敬意」です。

 常連のお客さまであり、多少の言葉の乱れが許容される間柄であったとしても「感謝と敬意」を感じられないものならば、そのような接客はお勧めできません。親しき中にも礼儀ありと言いますよね。

 また、親しみやすい接客となれなれしい接客の違いも、そこに感謝と敬意を感じられるかどうかなのです。

 このような事例をスタッフ間で共有することで、「自分もやっているかもしれない」「私も気をつけよう」「私ならそんな時に何というだろう?」と自分事だと捉えることのできるメンバーもきっと増えてくるでしょう。

 次回も、また接客の色々な事例をご紹介してまいります。お楽しみに。

七條千恵美
株式会社GLITTER STAGE 代表取締役
1973年京都府出身。同志社大学卒業後、日本航空に入社。
お客さまから多くの賞賛をいただき、さらに際立った影響力を持つ客室乗務員として
「Dream Skyward優秀賞」を受賞。取締役から表彰を受ける。
また、TOP VIPフライトの中でも最上級ハンドリングのフライトであった皇室チャーターフライトのメンバーに抜擢された経験を持つ。経営破綻後の2010年より2年間、客室教育訓練室のサービス教官として約1000人以上の訓練生を指導し、多くの優秀なCAを輩出。教官としての会社評価は、評価最上位に該当するS評価を受けるなど教官としても数々の実績を残す。サービスマインドの強化と身だしなみの授業は評価が高く「気づきの女王」「身だしなみ隊長」と呼ばれる。現在は、株式会社GLITTER STAGEの代表取締役として接客マナー研修や社員教育などで全国を飛び回る。「強い牽引力とわかりやすさ」には定評がある。主な著書に、『接客の一流、二流、三流』(明日香出版社)、『これだけできれば大丈夫! すぐ使える! 接客1年生』(ダイヤモンド社)がある。