政権与党ナンバー2の自民党幹事長は、党総裁の岸田氏が首相に就いているため「事実上、党務を取り仕切るナンバー1」(幹事長経験者)といわれる。各種選挙での公認権に加え、莫大な党のカネを差配する最重要ポストだ。自民党に支給される2021年の政党交付金は約170億円に上る見通しで、この他にも巨額の政治献金が党の金庫を潤している。

 さらに、幹事長ポストは自民党の政策決定のみならず、政府の各種施策に絶大な影響力を持つ。政策は高市早苗政調会長が各部会・委員会での検討を踏まえて提言や公約などをまとめるが、最終的に幹事長の「決裁」が得られなければ画餅に終わる。たとえ首相や閣僚らが政府で決定する事項であっても、議院内閣制の下では「与党の承認=幹事長の意向」を無視することはできないのだ。

自分より高齢の同僚議員に怒鳴ることも
ついたあだ名は「モテキング」

 それほど重要な自民党の幹事長ポストだが、霞が関官僚たちが茂木氏の就任に不安を抱くのは、その「人徳」にある。

 東京大学卒、米ハーバード大学大学院修了という輝かしい経歴を持つ茂木氏は、総合商社の丸紅や読売新聞、大手コンサルタント会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、1993年7月の衆議院選挙で初当選。沖縄・北方担当相や金融相、党政務調査会長などを歴任してきた。キャリアも能力も他の政治家を圧倒するレベルといえるが、茂木氏を担当した全国紙政治部記者はこう声を潜める。

「優秀な人物であることは誰もが認めるところでしょうが、とにかく怒りっぽい人なんですよ。相手が理解できないことを言ったり、職務に怠慢があると思ったりすれば遠慮せずに怒る。それは相手が官僚であっても、記者であっても同じです。驚いたのは、自分よりも高齢の同僚議員にも怒鳴っていたこと。下につく党職員や官僚は戦々恐々としているはずです。これからハレーションがいろいろとあるでしょう」

 求める仕事のレベルが高く、そこに達しない回答であれば納得しない。意に沿わないものにイライラし、激怒することから「モテキング」との評もあるようだ。