思うように回復せずに、結果的に休職が1年間に及ぶことになるかもしれませんが、いきなり長期の休職をすすめることはありません。仕事内容や経済的な事情にも配慮が必要ですし、復帰が難しいと見なされて患者さんが職場で厳しい立場に立たされるリスクも避けたいからです。

「1~2週間、不調が続いたら」受診を

「何もしなくても、すぐに治る」ケースが多い適応障害ですが、抑うつや不安のために会社を欠勤する、学校を欠席するなど、通常の社会生活に苦労するようなら、病院にかかるべきです。

 一般的には「その状態が1~2週間続いたら」受診をおすすめします。「朝起きられない、起きようとしても全く身体が動かない」となると、うつ病の初期症状かもしれません。「朝、体が鉛のようにだるい」と、うつ病の患者さんはよく言います。

 不眠もよく見られる症状です。寝つきが悪かったり(入眠困難)、一度寝ついても2~3時間で目が覚めてしまったり(中途覚醒)、あるいは両方の症状があります。症状としては、中途覚醒の方が深刻です。

 うつ病とまでいかなくても、ストレスが原因で眠れない経験は、誰しも心あたりがあるのではないでしょうか。メカニズムとしては、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に似た部分もあります。

 PTSDとは、ポスト・トラウマティック・ストレス・ディスオーダーのことになります。大災害や戦争、あるいは暴力など、危うく死に至るような強烈な出来事がトラウマとなり、発症します。原因となった出来事が鮮明によみがえる「フラッシュバック」現象や、不安、恐怖、睡眠障害などが主な症状です。

 適応障害による不眠も、フラッシュバック現象に近いものが原因と考えられます。ふとしたときに、強いストレスを感じた記憶がよみがえり、神経がたかぶって眠れなくなるのです。

 例えば、上司からちょっとした小言をもらった場面が何度も頭をよぎって、嫌な気分になる、といったケースです。多くの人はそこで「なにくそ」と奮起したり、思い思いのリラックス法を試すなどして、ストレス反応が長引くことはありませんが、1日ならともかく1週間も続くようだと、治療の対象と考えられます。