大都市圏での公立校復権の勢い

 大学入試改革は迷走した。英語4技能は取りやめとなり、国語などでの記述式は先送りとなった。本来は2年前には確定しておくはずの入試制度の内容が、20年末に大きく変化したわけで、受験生が不安を覚えるのも当然だろう。また、大都市圏の私立大定員厳格化の動きも、もはや私立大が滑り止めの併願対象たりえないと、安全志向に拍車をかけてしまった。

 再びランキングを見ていこう。注目は大都市圏の公立校だ。大阪の進学指導特色校と呼ばれていたグローバルリーダーズハイスクール(GLHS)10校のうち、府立御三家の3位北野(13位・9位)、17位天王寺(6位・17位)、100位大手前高校(76位・87位)と40位茨木(25位・23位)、13位三国丘(82位・51位)の5校が上位にランクされている。

 私立一貫校が上位を占めていた京都大合格者ランキング上位に、北野と天王寺が食い込んだことがその表れであり、全国ランキングの100位内に5校も入っていることからも、大阪府の力の入れ具合がうかがえる。

 首都圏では、東京と神奈川の公立トップ校で動きがあった。東京大合格者ランキングを見ると、21年入試では首都圏にある公立校が躍進した印象がある。中でも東大合格者数63人で9位に躍進した東京の32位日比谷(115位・129位)が、公立校復権の象徴だろう。

 地元の塾業界が成績優秀者を送り込んだ神奈川の48位横浜翠嵐(129位・129位)も急速にランクを上げている。とはいえ、関西圏ほどの勢いはない。その点、地方の名門公立進学校は、旧帝大を筆頭に、地元の国公立大にいかに多くの卒業生を送り込むかが期待されており、それに応えることで「国公立100大学合格力」のランクを保っている。

 21年から実施された初めての大学入学共通テストは、初回ということもあったのか想像以上に優しかったようで、強気で2次試験への出願をする受験生も目に付いたという。2回目となる22年の共通テストは、センター試験のときがそうだったように難化するという観測が強い。

 とはいえ、受験生の親世代が経験したようなハードな受験環境にはもはやない。少子化で格段に大学には入りやすくなっている。この点については、12月中に連載予定の「2020年代の教育」の中で取り上げていきたいと思う。