おでんは手間がかかりすぎる商材
「焼きいも」にコンビニ各社が熱視線
そもそも、おでんの何が悪いのか。
加盟店の手間がかかりすぎることが最大の問題だろう。ひと頃に比べたら大分、落ち着いているが、コンビニで働くアルバイトが集まらなくて、どうしようもない時があった。
あるオーナーからは「『おでんの鍋を洗っておいて』などと言えば、バイトから露骨に嫌な顔をされた」と証言する。だから加盟店オーナーからも「おでんはやめたい」という声が上がってくるわけだ。
コンビニによっては、おでんの鍋を完全に撤去し、代わりにおでん種だけ売っている加盟店も出現しているようで、コンビニのおでんを巡る賛否は渦巻いているのが現状である。
しかし、「おでんを撤去したからといって、そのスペースで代わりに売るものがない」(あるコンビニチェーン幹部)というのがこれまでの実情だった。
「いい商材があったら教えてくださいよ」など、チェーン本部の担当者から冗談とも本気とも取れる話は何度も聞いた。
11月2日の日本経済新聞によると、コンビニ業界2位のファミリーマートでは21年に国内店舗の約2割に当たる約3800店までおでん販売を縮小。
同3位のローソンも全体の約4割まで縮小するというから、「コンビニからおでんが消えるのか」と嘆く方もいるかもしれない。
セブン-イレブンはおでんを販売している店舗数を公表しているわけではないが、どこもピーク時に比べたら、おでんの販売量は確実に少なくなっているだろう。
そこで、「おでんをやめたい」という声に応えて登場したのが、「焼きいも」だ。
焼きいもといえばディスカウントストアのドン・キホーテが有名だ。かつて財務担当の役員が決算発表の席上で、インバウンド売り上げ激減の様子を指して「焼きいもより少ない」といって会場を沸かせたが、笑い事ではない。今では立派な商材に育っているといっていいだろう。
焼きいもの火付け役としてドンキの果たした役割は大きく、相次ぐ焼きいも本格展開の発表はコンビニチェーンがドンキの後追いをし、一気に過熱している。
ファミリーマートは、19年から焼きいもをテスト販売。まさにドンキにファミマの資本が入ったタイミングで、成果物としては大きいものがあったといえそうだ。