いま、住宅ローンの金利は史上最低の水準にまで下がっています。マイホームの購入や、すでに組んだ住宅ローンの見直しを考えている方は、「金利が史上最低」などと聞けば「いまがトクするチャンスでは?」と期待がふくらむかもしれません。しかし、住宅ローン金利の低下には、実は「良い面」だけでなく「悪い面」もあります。
累計11万部を超えるロングセラー『住宅ローンはこうして借りなさい』の改訂4版を上梓した深田晶恵さんが、今回から5回にわたって今こそ押さえておきたい住宅ローンのポイントを紹介します。
史上最低の住宅ローン金利でトクする人、ソンする人
多額のお金を借りる場合、金利が低いというのは一見、トクのように思えます。たしかに金利が0.1%違うだけで「返す利息」が少なくなるわけですからおトクといえるでしょう。これは「良い面」です。しかし、この低金利には「悪い面」もあるのです。特に注意が必要なのは、これから新規に住宅ローンを組んでマイホームを買う人です。金利が低いと、毎月の返済額が少なくなるため、多額のローンを組むことができます。借り手にとって良いことに思えるかもしれませんが、「月々これくらいの額なら返せるだろう」と目先の負担感だけに気を取られ、つい「借りすぎ」になるリスクがひそんでいるのです。
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住宅ローンは多額の借金。この「借りすぎ」は、家計に時限爆弾を仕込むようなものといえます。60歳でいよいよ定年退職を迎える際に初めて「ローンが1000万円以上も残っている!」と気づくケースは少なくありませんが、その時はすでに“後の祭り”です。
近頃は老後不安が広がっており、「退職金も公的年金もアテにならない」と嘆く声をよく耳にしますが、「老後が心配」といいながら、60歳以降も返済が続く多額のローンを組んでしまう人はとても多いのです。私は、これでは本末転倒だと思っています。「老後の安心」を求めるなら、まずは住宅ローンの組み方が退職後の生活に大きな影響を及ぼすことを知り、60歳までに返せるローンを組むことが大切です。
一方、住宅ローンの借り換えを考えている人にとって、今の金利水準はローン見直しのビッグチャンス。「知らず知らずのうちに老後に爆弾を抱えていた」という人も、借り換え方しだいで大きく軌道修正が可能です。いま住宅ローンを見直せば老後の生活を安心なものにできるのですから、これは素直にローン金利低下の「良い面」と言っていいでしょう。
ちなみに、これほどおトクな住宅ローンの見直しは、これがラストチャンスかもしれません。現在、住宅ローンの金利水準がこれほどまでに下がっているのは、景気低迷による低金利だけが理由ではありません。実は、銀行間で住宅ローン獲得競争が激しくなっていることも、大きく影響しています。「景気低迷」「銀行間の競争激化」といった住宅ローンを取り巻く環境に少しでも変化があれば、今ほどの低金利は二度と実現しないかもしれないのです。住宅ローンの見直しを検討している人は、先延ばしにせず、すぐに取り組みましょう。