大量閉店することになった理由

 最大の原因は、過去3年間の急速な店舗拡張計画だった。

 海底撈の最初の店舗開設からちょうど20年目にあたる2014年、海底撈の国内外の支店数は100店舗、そして2016年末の時点でも176店舗にすぎなかった。しかし、なんと2017年だけで97の新店舗を開店させている。

 その勢いを借りて、2018年9月に香港株式市場に上場して資金を調達すると、2019年にはさらなるチェーン拡大を宣言。上場で得た資金の60%を投入して2019年1年間で308店舗、2020年には544店舗を新設。そして2021年上半期だけでもすでに299店舗が新設され、6月末時点で支店総数は1597店に達した。

 しかし、7月からはそのスピードがぐっと落ち、今年7、8月に新設されたのは50店舗ほどとなった。そして、11月初めになって、今年末までに顧客流量や業績が理想的ではない約300店舗を、順次閉店させていくと発表したのである。

海底撈の独特な人材育成システムとは?

 この拡大計画を支えたのは、まず経営権を握る張勇氏一家の「決意」だった。そしてその拡大によって海底撈の火鍋市場シェアは約6%となり、業界トップに押し上げた。

 さらに、その徒弟制度型人材育成システムもまた、急速な店舗展開に大きな役割を果たした。

 経済メディア「財新網」の記事によると、海底撈の店長は必ず2年のうちに職員の1人を店長候補(徒弟)として育て上げる責務を負っている。そして店長には固定給と自身の店舗利益の0.4%だけではなく、徒弟が独立して開いた店の利益の2.8~3.1%を、さらにその徒弟が育てて独立した孫店長の店からも1.5%の利益を受け取ることができるシステムになっている。その結果、月になんと数百万元(数千万円)の収入を得ている店長もいるという。

 このやり方で、海底撈は次々と店長候補生を育て上げ、店舗を増やすことに成功した。さらに上場によって得た資金を新店舗設立資金に充てて、次々とそのネットワークを広げていった。

 同時に傘下店舗の職員数も増大。2018年の上場前には5.33万人だったその数は、今年6月末にはなんと約3倍近い14万人あまりになった。一方で、彼らの賃金コストは運営コストの3割強を占めており、大きな負担になっている。