いち早く外国人入国を禁じた岸田政権
毒性によっては早々に緩和の決断も?

 さて今回、オミクロン株に対する日本政府の対応は確かに速かった。

 岸田首相は11月29日、南アフリカ共和国からのオミクロン株の報告を受け、早々に外国人の全面入国禁止を発表した。安倍・菅政権の“轍(てつ)”を避けるべく、批判を自ら「すべて負う覚悟」を示したもので、国内から一定の評価を得た。

 ただ、同日に通知した国際線の新規予約停止要請は、3日で撤回を余儀なくされた。

 その直前には、アフリカ南部諸国のみを対象に渡航制限を敷いた日本や米英各国が、南ア大統領から「不当で非科学的、かつ発展途上国を苦しめるもの」「大きく失望した」と名指しで批判を受けるなど、混乱も続いていた。

 なぜこれほどまでに、国は翻弄されるのか。それはひとえに、オミクロン株が「何をしでかすか」が未知数で不気味だからだ。人は知らないものを恐れる。

 ただ、大量の変異も、人類にとって実際どの程度の脅威になるかは、厳密にはまだ分からない。

 発症前に感染させやすいのであれば、水際対策にも限界がある。オミクロン株は「デルタ株と比べ、感染から他の人に感染させるようになるまでの期間が短い可能性がある」という報道もあり(英保健当局、BBC)、すでに日本人の感染例も報告され始めている。

 今後オミクロン株の性質がより明らかになり、もし毒性がさほど強くないとなれば、早めの入国規制緩和も考えるべきだろう。ワクチンや治療薬に一定以上の効果が認められ、円滑に十分に入手できるのなら、なおさらだ。その場合、往来再開の遅れは経済に甚大な被害をもたらしかねない。

 オミクロン株を取り巻く状況は、刻一刻と変化している。引き続き、岸田政権の迅速で柔軟な判断に期待したい。

(監修/ナビタスクリニック理事長、医師 久住英二)

久住英二
ナビタスクリニック理事長、内科医師。専門は血液専門医、旅行医学(Certificate of knowledge, the International Society of Travel Medicine)。1999年新潟大学医学部卒業。2008年立川駅ナカにナビタスクリニック立川を開設。働く人が医療を受けやすいよう、駅ナカ立地で夜9時まで診療するクリニックを川崎駅、新宿駅にも展開。渡航医学に関連して、ワクチンや感染症に詳しく、専門的な内容を分かりやすい情報にして発信することが得意。医療に関するメールマガジン MRICを発行する一般社団法人医療ガバナンス学会代表理事。