二大ハウスメーカーの大和ハウス工業と積水ハウスの業績が絶好調だ。いずれも2024年度中間決算は過去最高の売上高を更新。積水ハウスは25年1月期に初の売上高4兆円に到達し、営業利益も初めて3000億円を突破する見込みで、永遠のライバルで売上高5兆円を誇る大和ハウスを猛追する。積水ハウスは海外事業と不動産開発事業を強化して業績拡大をもくろむが、ある財務指標に着目すると、事業多角化に成功した“先駆者”である大和ハウスが味わった“苦しみ”を積水ハウスも経験するかもしれない状況が見えてくる。特集『株価、序列、人事で明暗! 半期決算「勝ち組&負け組」【2024秋】』の#2では、積水ハウスが味わうであろう事業多角化の“代償”について解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
米国ハウスビルダーの巨額買収で
大和ハウスを猛追する積水ハウス
1955年創業の大和ハウス工業と60年に創業した積水ハウスは、共に関西を地盤としたハウスメーカーだ。かつて一戸建て住宅の販売競争でしのぎを削り、今でも互いを常に意識する永遠のライバルである。
両社の祖業である一戸建て住宅事業は、人口減少に伴って国内市場が縮小しており、大和ハウスも積水ハウスも事業ポートフォリオの多角化を進めてきた。
大和ハウスは積水ハウスに先駆けて、事業の多角化に成功した。取得した土地を活用して集合住宅を開発するだけでなく、ロードサイドの遊休地を利用して流通店舗事業を始めたり、物流施設や商業施設などの不動産開発を手掛けたりしたのだ。2013年には中堅ゼネコンのフジタを買収し、ハウスメーカー、デベロッパー、ゼネコンの「三刀流経営」で事業を急速に拡大してきた。
そして24年3月期に売上高5兆円を突破。創業者・石橋信夫氏の「創業100周年で売上高10兆円」という夢の実現へ折り返し地点を過ぎた。
これに対し、積水ハウスも大和ハウスに追い付こうと、集合住宅や都市再開発、ホテル事業などを幅広く手掛け、16年には中堅ゼネコンの鴻池組と資本提携を結び、その後子会社化した。しかし、急成長を続ける大和ハウスとの差は開くばかりだった。
そこで、積水ハウスは大勝負に打って出た。「積極的成長」を掲げる海外事業、とりわけ米国事業を拡大しようと24年1月、約7000億円もの巨額を投じてハウスビルダーのM.D.C.ホールディングス(以下、MDC)を買収すると発表したのだ。
25年1月期はMDCの業績がすぐさま貢献し、好調な都市再開発事業が売り上げを押し上げた。積水ハウスは史上初の売上高4兆円に到達する見込み。引き続き、海外事業と不動産開発ビジネスの強化により業績を拡大して大和ハウスを猛追する。
ライバルに追い付こうと事業多角化を推し進めてきた積水ハウスは、業績拡大に伴って事業ポートフォリオの構成が大和ハウスと似てきている(下図参照)。
積水ハウスがこのまま勢いに乗るかといえば、そうは問屋が卸さない。ある財務指標に着目すると、積水ハウスを待ち受ける“いばらの道”が見えてくるのだ。
次ページでは、積水ハウスを待ち受けるいばらの道を解き明かす。これは、事業多角化に伴って先駆者である大和ハウスも通った道だ。その指標は企業の成長に欠かせない資金調達はもちろん、株価の行く末をも左右するものである。