書くと不安がなくなる。自分自身が整理される。そう経験的に感じている人も多いだろう。だが、それはなぜか、どういう書き方が効果的なのかを知っている人は少ない。
習慣化のプロとしてこれまで5万人を指導し、1000人以上をコーチングしてきた古川武士氏が、行き着いた最も効果的な習慣は「書く」ことだった。必要なのはノートとペンのみ。自分と向き合い、本当に大切なことに気づけば、生き方は今よりずっとシンプルになる。自分を整理するための「書くメソッド」を体系化した書籍『書く瞑想』から、一部を抜粋して特別公開する。

「不安がスッと消える」書くだけで実感できる3つの効果Photo: Adobe Stock

なぜ、書くことで整理されるのか?

 ただ紙に書き出すというシンプルな行為によって、頭の中でこんがらがっていたことの解決の糸口が見えてきたり、自分が何者で、何を望んでいるかを改めて知ったりすることができます。

 これは驚くべきことです。

 なぜ、書くことがこれほどまでに大きな効果を発揮するのでしょうか?

 書くだけで、なぜ心や生活を整理し、ひいては人生まで変えることができるのでしょうか?

 書くことによる3つの効果を見ていきましょう。なお、心理学などで検証されている科学的根拠については次回、ご紹介します。

(1)「気づき効果」── 人生を変える洞察と着想が生まれる

「人は、気づきからしか変われない」と私は思っています。

 気づきには、洞察(インサイト)と着想(インスピレーション)があります。

 洞察とは、辞書では「物事を観察して、その本質や、奥底にあるものを見抜くこと。見通すこと」とあります。

 洞察的な気づきは、生活パターンの問題や夫婦関係における問題の深層にある原因を見るときなどに有効です。

 たとえば、食べ過ぎや飲み過ぎ、長時間スマホを見続けてしまうことの真因が、仕事の不安によるストレスだと気づいたとします。

 こうすると、食べる量やスマホ時間を減らす行動習慣ではなく、ストレスケア習慣にこそ時間をかけることがより本質的です。

 この洞察的気づきとは、同じところを何周も回って気づくような側面があり、シンプルな洞察から一気に解決へ向かうことがあります。

 自分にとって深く大切なことを見通すには、洞察的な気づきが生まれることが必要です。

 着想とは、「ある物事を遂行するための工夫や考え。思いつき」と辞書にあります。着想的な気づきとは、あらゆる問題や原因に対して、どうすればいいかという解決策がぱーっと広がることです。

 ニュートンがりんごが落ちる光景を見て万有引力を発見したとされる説や、アルキメデスが入浴中に「ユーレカ!」と言って浮力の原理を閃いたという逸話は着想的な気づきです。

 ある程度、試行錯誤の中で、模索し悶々とする時期を過ごしながら、孵化するように生まれるのが着想的な気づきです。

(2)「片づけ効果」──大切なこと、不要なことが明確になる

 モノの片づけの極意を一言で言えば、大切なものを残し、不要なものを捨てることです。

 心の片づけも、同じプロセスを経ていきます。すなわち、自分の生活・人生で大切なことが何かを見極めて、それ以外のものを捨てることです。時間とエネルギーには限りがあります。

 何に時間を使い、何をやめるのかを決めていくことがすなわち、心の片づけです。

 片づけの基本は、手持ちのモノを「全部出し」、必要か不要かを「分ける」ことです。

 心の片づけも同じで、心の声を「全部出し」、基準にしたがって「分ける」ことになります。

 しかし、これは簡単ではありません。大切なことと不要なことを「分ける」には、基準を明確にする必要があるからです。

 では、大切なことを見極める基準は何でしょうか?

 それは「感情基準」です。

 大切なこと、不要なことは、人それぞれ求めていることによって答えが違います。

 当然、理想の人生も生活も求めていることによって変わってきます。

 だからこそ書くことで自分を整理し、探究していきましょう。

(3)「自己認識効果」──自分が深く求めていることがわかる

 自分が何を深く求めているかを知る源は、「自己認識」です。

 書くことで「自己認識力を高める」ことが重要です。

 内観研修所長の吉本伊信氏はこう言っています。

「自己を知る」ことは、私たちがどのような人生を送る上でも重要なことです。この大事なことを忘れ、自己の外のことに耳目を奪われているのが昨今の状況です。教養を深めたり、理論をたくわえていくには書物その他に頼ればよいのですが、他ならぬ独自の存在であるこの「自己」については、具体的にはどこにも書いてありません。それは自分で探し求め自分の中から学ばねばならないのです。自分をよく見つめ、自分の姿を歪みなく正確につかむためには、徹底的に自分1人で、生身の自分に向かい合う以外に方法はありません。──三木善彦『内観療法入門』序文より

 自分の外に、自らの人生の答えを見つけようとしてもそれは混乱するだけです。

 生き方の指針、幸せの基準は、自分の中にしかありません。自己を認識できなければ、自分を満足させる生活や人間関係、人生の方向性も見つかりません。

 私は書きながら自己対話を繰り返すことで手に入る本質的価値は、「自己認識力」だと考えています。

 自己認識は、心理学の世界では、エモーショナルインテリジェンス(EI)と言われています。EIを提唱したダニエル・ゴールマンは、自己認識とは「自分の内面の状態、好み、資質、直感を知ること」と定義しています。

 グーグルの自己開発プログラム「Search Inside Yourself(SIY)」を開発したチャディー・メン・タンは、この定義の良さは「自己認識は自分の一瞬一瞬の経験を洞察することだけにとどまらず、自分の長所や短所を理解したり、自分のうちにある知恵にアクセスできたりといった『自己』のもっと広い領域にも及んでいる(*1)」ことにあると言います。

 私もこれに賛成です。私たちの心は、海にたとえるならば、表面に目を向けるか、水深30メートルに目を向けるかで見えるものが違います。日常の気分は表層ですが、価値観、使命は深層に眠っています。

 私は1年にわたって受講者の人生と向き合うコーチングのプログラムを10年やっていますが、ここには自分が何をやりたいのかに迷う人たちがやってきます。

 コーチングしてわかったことは、心の奥で望んでいることと現実との乖離に大きなズレが生じるとき、人は人生に迷うということです。

 心の奥で望んでいることが何かは、自分の内側で探求するしかありません。まさに自分を知ること、自己認識力が高まるとよりくっきりと浮かび上がってくるものです。

 まずは自分と向き合い、自分をしっかり認識することから始まるのです。

*1  『サーチ・インサイド・ユアセルフ 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』チャディー・メン・タン、一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(監修)、柴田裕之(訳)、英治出版、2016

(本原稿は、『書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』からの抜粋です)