「今の会社で働き続けていいのかな?」「でも、転職するのは怖いな……」。働き方が大きく変わるなか、悩みを抱える人は多いだろう。高卒から、30歳で年収1000万円超という驚きの経歴をもつ山下良輔さんは、そうした「転職迷子」たちから圧倒的な支持を得ている。山下さんは12月に出版した初の著書『転職が僕らを助けてくれる――新卒で入れなかったあの会社に入社する方法』で、自らの転職経験を「再現性のあるマニュアル」として全て公開。
その戦略は「外資系やコンサル業界は、学歴エリートでなくても入れる」「職歴に一貫性はなくてもいい」など、これまでの「転職の常識」を塗り替えるものばかりだ。どうしたら人生を変える転職ができるのか、どうしたらいい会社選びができるのか。この連載では本書より一部を特別に公開する。

転職で年収が4倍になった僕が発見した「社内で認められる人」と「転職して認められる人」の差Photo: Adobe Stock

 詳細は本書で紹介していますが、僕がおすすめする「わらしべ転職」では、社内MVPは実績としてほぼ意味がないと考えています。転職の実績をつくりたいなら、「他の人がやらない仕事」を狙え。これが結論です。

 では、「他の人がやらない仕事」を具体的にどうやって見つけて、実現していけばいいのか。

 勘違いしないで欲しいのですが、この地球でまだ他の誰も成し遂げていないイノベーションをやってのけろという意味ではありません(もちろんそれができたら最高ですが)。

「他の人がやらない仕事」とは、言葉を補足すれば「会社の儲けに直結するのに、地味で、社内での評価につながりにくい仕事」。そのなかにこそ、転職で強くPRできるチャンスが隠れているのです。

 僕がおすすめするのは、一般の社員でも手が届く、「半径3メートル以内」のルールや仕組みを変えることです。

 例えば僕が新卒で入社した自動車部品会社、松田電機で実践したのが「書類フォーマットの修正」です。

 新しく車を開発するときには毎回製品の製造工程をチェックする書類を作成するのですが、その書類のフォーマットがわかりづらいまま放置され、結果的に抜け漏れが頻繁に発生していました。そこで、誰でも間違いのない手順で作業・記入ができるように、必要な項目の「枠」を細かく、わかりやすく変更しました。

 さらに、「仕事のシステムの変更」も行いました。

 工場でのスイッチの組立工程をシミュレーションするとき、その図面はずっと「2次元」でした。しかし、現場での作業のことを考えれば「3次元」のほうが、誰もがイメージしやすくなります。変更しても、さほど新たなコストがかかるわけではないのに、放置されてしまっていた。そこで僕は上司に改善の提案を行い、3次元のシステムを導入しました。

 どちらも専門知識がほとんどない当時21歳の僕でも気づく内容でしたが、誰も手をつけていませんでした。理由は簡単で、みんな興味がなかったからです。

「新製品の開発」や「技術の探究」には誰もが熱心に取り組むけれども、それを行うために必要な(でも地味な)書類のフォーマットやマニュアルについては、ムダや非効率が放置されている。こういうことはどの会社でも起こっていると思います。

 日々現場で働いていると

「あのデータをそのまま連携したら入力作業が減るのに」
「エクセルでつくっているデータを、全員がオンライン上で修正できるようにすればいいのに」
「日程調整はもっと効率化できるのに」

 といった気づきを得られるはず。

 自分に影響がある「半径3メートル以内」の範囲でいいので、そうしたひとつひとつのムダに気づき、改善する。会社全体の儲けになることは何かを考えて、自分なりに行動する。そして、もしやってみていい結果が得られたら、すぐ社内に共有する。こういう仕事をひとつひとつ積み重ねていくことが、僕らの「実績」になります。

 あまり目立つことではないために、社内だと、もしかしたら褒めてくれる人は少ないかもしれません。でも、しっかり会社の利益に貢献していれば、転職では認められます。「社内の評価=転職に役立つ実績」ではない。この事実を知っていれば、もう迷うことはありません。

※この記事は『転職が僕らを助けてくれる――新卒で入れなかったあの会社に入社する方法』からの抜粋です。