東京は金融マネーで遊ばれ、マンション価格が高騰!

牧野 「安い物件を欲しい人がいるんだから、デベロッパーは出せばいいじゃない」ってよく言われます。でも、僕はデベロッパーに居たからわかるのですが、もう商品企画が成り立たないんですよ、今。

 まず、土地代が高くなっている。高齢化や人口減がたびたびニュースになっている中で、「なぜ土地代が上がるんだ?」と疑問を抱く方もいると思います。これ、前回お話しましたが、投資家はいっぱいお金があるんですよ。自宅用に購入する実需ではなく、極端にいうと金融マネーで遊んでいる状態。額に汗して頑張っているお父さんやお母さんが買うようなマーケットじゃなくなっている、というのがひとつです。

 それからもうひとつは、建築費の高騰です。これは世界マーケットの話で、鉄やコンクリートなどがものすごく値上がっています。日本の建築資材の大半は輸入、原材料含めて。たとえば、原油価格が上がるとか、鉄鉱石や石炭が上がるということは、鉄骨の値段が上がることにつながり建築費が跳ね上がる。それから新聞でも言われているように、工事現場で働く人が不足している。そうすると建築費は、ますます上がっていくんです。

 もう原価だけで、年収400万円台の人が買える価格を超えています。商売だから赤字を出すわけにはいかないので、すごく単刀直入に言うと、もうこの人たちを顧客ターゲットにはできないのです。

日下部 富裕層をターゲットに、ということになってきますね。

牧野 そのとおりです。そうなると、前回お話した4つのカテゴリー、「国内外の投資家」「地方の富裕層」「高齢者の節税対策」「超パワーカップル」の人達を相手に商売しないといけない。これはマンションデベロップメント業界の人も認識しているし、ここしか生きる道が無いんですよ。

 先日、あるゼネコンの人と会ったとき、ゼネコンの人達も「こんなに建てて大丈夫なのか?」と思いながらタワーマンションなんかを建てている、という話を聞きました。

日下部 どんどん建っていますもんね。

牧野 いや、ほんとに。「もちろん商売になるからやっているけど、誰がどういう目的で買うのかよく分からない」と。それが現場で仕事している人達の実感なのです。

 あと、建築資材が値上がりする背景に、実は低金利も邪魔をしているんですよ。金利が低いということは、為替が安くなります。円が安くなると、輸入価格が上がる、それは住宅を建設する際の原材料費が上がることを意味します。住宅を提供する側も、年収400万円台の一般世帯に提供できないというのが現実です。

日下部 建設物価調査会が公表する建築費指数によると、2021年は10年前と比較して建築費が130%ほどに上がっていますね。

牧野 なるほど。たしかにマンション価格も、この15年ぐらいで3割ほど値上がりました。

日下部 SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)とRC(鉄筋コンクリート)ばかり上がっていたのが、ここにきて木造もすごく値上がりしてきているという。

牧野 日本の林業の問題もあるんですけどね。昔は国産材でやっていたのが、山を管理する人がどんどん減っていき雑木林のようになってしまう。そうするといい材木が採れないんです。木材ってちゃんと管理していないと建築資材にならない。山を相続した人が放置して、どんどん荒れ果てていく。それこそ空家問題じゃないけど、空き山林問題みたいな。そこで輸入材になった瞬間、世界マーケットの中で木材を買い負けてしまうのです。アメリカや中国が住宅を増やしたり、為替が安かったりで。

日下部 原材料の高騰、人手不足、投資家、様々な要因が入り混じって住宅の価格が上がっている。その上、住宅ローン減税の縮小やすまい給付金も終わるし、戸建てもマンションも今はどっちも辛い状態ですね。