新型コロナウイルスの感染が急拡大している沖縄、山口、広島3県に1月9日からまん延防止等重点措置が適用された。特に沖縄の感染拡大は米軍基地からの流入が要因の一つとされ、空港検疫など日本だけの努力ではコントロールしにくい状況に陥っている。日本でのオミクロン株の拡大はさらにスピードを増すと考えられる今、企業と個人はどう対策をすべきか。現在、備えるべき知識を伝えたい。(白鴎大学教育学部教授 岡田晴恵)
デルタ株の3倍の感染力だが軽度?不安と期待
オミクロン株については、これまでの変異株ウイルスに比較して軽症(せき、息切れ、息苦しさ、寒気、発熱、筋肉痛、関節痛、嘔吐、下痢など)にとどまる傾向が認められるとされる。しかし、WHO(世界保健機関)はデルタ株と比べ重症化しないもようとしながらも、高齢者への影響などについては十分なデータがそろっていないとし、「軽度」と分類すべき状況にはないとしている。
さらに、米国政府の首席医療顧問であるファウチ氏は、オミクロン株においては「重症化しにくいとしても、大量の感染者が発生すれば医療機関に大きな負担になりうる」として、「対策を緩めるべきではない」としている。この大勢の感染者が同時期に発生する可能性が高いことが、このオミクロン株ウイルス対策における本質的問題である。
オミクロン株の感染力は、昨年夏に第5波を起こしたデルタ株の3倍以上といわれ、喉や気管支などの上気道でのウイルスの増殖力が強くなっている。しかし、肺では弱くなっていると、WHOは報告している。動物実験では気管支や肺の奥でのウイルス量はデルタ株に比較すると2割から4割にとどまったともされている。
また、オミクロン株は、人の細胞受容体に結合する突起・Sタンパクの部分に多くの変異が入っていることが遺伝子解析で示されている。このSタンパクの立体構造解析によると、感染やワクチンによってできた中和抗体(感染を防御するように働く抗体)の働きが減弱すると想定される。つまり、オミクロン株は抗体による液性免疫(抗体が中心になって抗原を排除する免疫のしくみ)が弱められている。
しかし、一方で、ワクチン接種などで得た、細胞性免疫であるT細胞(感染細胞を排除する免疫機能)の機能は有効に維持されるものと考えられる。この細胞性免疫の記憶によって、重症化を阻止できることが期待されているのだ。