Twitterでは多くの人の悩みを吹き飛ばす“神ツイート”の連投で26万フォロワー突破、『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』をはじめとする「1秒シリーズ」が人気の精神科医Tomy先生。その「1秒シリーズ」のスピンオフで自身初の小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』を今月刊行し、早くも大きな反響が寄せられている。
外科専門医、消化器病専門医、がん治療認定医などとして医療現場に携わりながら、運営する医療情報サイト「外科医の視点」は開設3年で1000万ページビュー超え、Twitterのフォロワーは9万人超と、精力的に情報発信を行っている山本健人先生。著書『すばらしい人体』は、坂井建雄氏(解剖学者、順天堂大学教授)「まだまだ人体は謎だらけである。本書は、人体と医学についてのさまざまな知見について、魅力的な話題を提供しながら読者を奥深い世界へと導く」と絶賛されている。
2人は医師として治療行為にあたる一方で、SNSや書籍を通じ、さまざまなメッセージを伝えてきた。今回、お互いに「気になる存在」であったという両者による対談が実現。医師として本を書くことやSNSで発信することの意義、ネット上の医療情報との向き合い方、医師と患者の関係性など、多岐にわたって語り合った内容を3回に分けてお届けする。

ベストセラー本の著者【精神科医と外科医】がSNSで情報発信する意外な理由Photo: Adobe Stock

140文字の世界の強み

ベストセラー本の著者【精神科医と外科医】がSNSで情報発信する意外な理由精神科医Tomy
1978年生まれ。某名門中高一貫校を経て、某国立大学医学部卒業後、医師免許取得。研修医修了後、精神科医局に入局。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、産業医。精神科病院勤務を経て、現在はクリニックに常勤医として勤務。2019年6月から本格的に投稿を開始したTwitter『ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き』が話題を呼び、フォロワー数が急増。覆面で雑誌、テレビ・ラジオ番組にも出演。舌鋒鋭いオネエキャラで斬り捨てる人は斬り、悩める子羊は救うべく活動を続けている。主な著書に『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)をはじめとする「1秒シリーズがある。2022年1月に初の小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』刊行。 Twitterアカウント https://twitter.com/PdoctorTomy

山本健人(以下、山本):Tomy先生はTwitterのユーザーとの親和性がすごく高くて、発信の場としてTwitterがベストなんだと思います。Tomy先生が突然、彗星のごとくTwitterに現れたときのこと、僕も覚えていますから。とてつもない速度でフォロワー数が増えていって、言うことがすべてバズるみたいな感じでしたよね。

僕自身、Tomy先生が現れる少し前からTwitterをやっていて、Twitterはどんな世界で、どんなユーザーがいて、どういう言葉が好まれるか、なんとなくわかっていたので、Tomy先生のツイートは、そこにぴったりハマっているなと思いました。

Tomy:Twitterというツールが出てきた当初は、「140文字で何が書けるの?」とブログで何度かけなした記憶があります(笑)。後から考えると、どんな人が何のために使っているか、全然わかってなかったんですね。

山本:僕から見れば、Tomy先生の発信こそ140文字にぴったりなんです。140文字では語りきれないがゆえに、投稿に余白が生まれるんですね。異なる環境に生きている人たちが、メッセージを自分に当てはめて、余白を自分の言葉で埋められるじゃないですか。すべてを言い切らなくていいというTwitterのメリットを、うまく利用されてるなと思ってました。

「議論は答えを探している者同士で行うものなのよ。答えを変える気のない者同士が話し合っても時間の無駄」というTomy先生のツイートが僕は大好きなんです。これは重要なメッセージだと思います。

Tomy:医療領域の会議でも、結構ありますよね(笑)。僕は長く説明して書くのが苦手で、短い文章で書くスタイルが合っているんです。資料を集めたり調べたりしていると、書くことが苦痛になってしまうので、もともとTwitterと相性が良かったのかもしれないですね。

山本:それと、ユーザーさんにとっては「精神科医」という肩書が強いと思うんです。精神科医というプロフェッショナリズムがあると、説得力が全然違うなと思います。

ウェブサイトを自作した理由

ベストセラー本の著者【精神科医と外科医】がSNSで情報発信する意外な理由山本健人(やまもと・たけひと)
2010年、京都大学医学部卒業。博士(医学)。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。運営する医療情報サイト「外科医の視点」は開設3年で1000万ページビューを超える。Yahoo!ニュース個人、時事メディカルなどのウェブメディアで定期連載。Twitter(外科医けいゆう)アカウント、フォロワー9万人超。著書に『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)『医者が教える正しい病院のかかり方』『がんと癌は違います~知っているようで知らない医学の言葉55』(以上、幻冬舎)、『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)、『もったいない患者対応』(じほう)ほか多数。 Twitterアカウント https://twitter.com/keiyou30 公式サイト https://keiyouwhite.co

Tomy:ところで山本先生はブログでは当初、ハンドルネームで発信されてたんですよね。

山本:新聞の投稿は実名だったんですけど、2013年から新聞の投稿を4年ぐらいやっても何も変わりませんでした。何より、自分の書いたものがどう受け止められたのかという振り返りが全然できなかったんです。

僕は大学時代に水泳を6年間熱心にやっていたんですが、そのときは自分のパフォーマンスを批判的に振り返ることで成長できたという経験がありました。一方、新聞投稿では、そのサイクルを実現ができないことに大きなもどかしさを感じていました。

そんな中、広告業界に詳しい親類に相談したところ、「ブログをきっかけに書籍を出している事例がたくさんある」という話を聞きました。それまで、ブログから書籍になるのは自己啓発など限られたジャンルだけだと思い込んでいたんですけど、どうやらそうでもないらしいとわかり、それをきっかけにブログを立ち上げたんです。

Tomy:サーバーを借りて、ウェブサイトを自作されていますよね。

山本:そうです。僕は何を始めるときも事前に調べ倒すというスタンスなので、ブログもすぐに始めず、2か月くらいネットで情報をあさりまくったんです。書くからには、たくさんアクセスが集まらないと意味がないと思い、徹底的に研究した結果、自分でドメインを購入して、サーバーを契約して、ウェブサイトを自作したほうがいいという結論に達しました。

自分の発信する内容からすると、医療情報サイトに近かったので、長期的に何度も見返されることを想定したとき、Tomy先生がやられたようなアメブロなどの無料ブログよりも、有料で立ち上げたほうがアクセスが集めやすいと考えたわけです。

Tomy:無料ブログはどちらかというと日記的な感じだから、山本先生が目指すポータルサイト的なものとは違ったということですね。なるほど。

ネットで炎上しない方法

Tomy:情報発信をするにあたって気をつけていることはありますか?

山本:私がブログやSNSで発信を始めた時に、一番恐れていたのはやはり炎上です。炎上を避けるために最も意識しているのは、「主語の大きな批判」を避けることです。

「医師は」「メディアは」「政治家は」といったように、大きな属性を主語にしたネガティブな発信は、多くの人を傷つけるリスクがあると思います。実際、こうした主語の大きな批判は、「代表性バイアス」といって自分の思い描く特定の人物を属性全体に当てはめてしまっているケースが多いので、リアルな人間関係でも注意が必要ですよね。

それから、ネット上の発信ではオピニオンよりファクトを重視する、というのも心がけています。理論上、全てのオピニオンには賛否両論が存在するので、何らかのオピニオンを述べる以上、必ず否定的な言葉は飛んできます。一方、出典を明示したファクトには、批判は起こりにくいです。もちろんオピニオンの発信も大切ですが、私の場合は、オピニオンは書籍で発信するようにしています。