そもそも「住宅ローン減税」は、いくらお金が戻ってくるもの?

深田晶恵(ふかた あきえ)  ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年、北海道生まれ。外資系電機メーカーを退職後、96年にFPに転身。日本経済新聞、日経WOMAN、日経ビジネスAssocie等でマネーコラムを連載中。国土交通省「住宅ローン商品改善ワーキングチーム」および「消費者保護のための住宅ローンに係る情報提供検討会」、住宅金融普及協会「住宅ローンアドバイザー運営委員会」委員を歴任。こうした委員会で金融機関と不動産事業者に住宅ローンのリスクの説明を義務づけるガイドライン作りを提唱するのが目下のライフワーク。主な著書に『30代で知っておきたい「お金」の習慣』『「投資で失敗したくない」と思ったら、まず読む本』他多数。
twitter:
http://twitter.com/akiefukata
生活設計塾クルー http://www.fp-clue.com/

 住宅ローンを組んでマイホームを買う場合、いくつかの要件を満たすと、年末の住宅ローン残高に応じて納めた所得税と住民税の一部が戻ってくる「住宅ローン減税」という制度があります。

 現行の住宅ローン減税は2013年末の入居分までで期限が切れるのですが、現在、政府は、消費税増税後の住宅購入の冷え込みを抑えるため、2014年以降の入居を対象とした大型の住宅ローン減税を検討中です。

 では次に、住宅ローン減税の効果はどれくらいなのかを見てみましょう。

 現行制度では、住宅ローン減税を受けられるのは「最長10年間」で、戻ってくるお金は「年末時点の住宅ローン残高の1%」となっています。ただし、上限額は2012年入居分で住宅ローン残高3000万円(年間30万円)、2013年入居分で住宅ローン残高2000万円(年間20万円)です。

 すると「2012年に入居した場合は、30万円×10年間で最大300万円の減税になるのか」と考える人が少なくありませんが、実際にはそこまでの効果は出ないケースが大半です。

 住宅ローン減税は「納めた税金が戻ってくる」制度ですから、もともと納める税金が少なければ、戻ってくる額も少なくなります。

 たとえば年収500万円、妻が専業主婦で小学生の子どもが2人いる家庭の場合、減税の対象となる税金(所得税と住民税の一部)は20万円程度。上限が30万円だとしても、実際に戻ってくるのは約20万円ということです。

今後の大型住宅ローン減税、
ポイントは「金額」よりも「期間」

 2014年以降の住宅ローン減税は、拡充が予想されるとはいえ、どのような内容になるかはまだわかりません。例年、12月には来年度の税制改正大綱が発表されるのですが、今年は衆院解散により政府税制調査会も解散しており、税制改正大綱が出るのは年明けになる予定です。

「マイホーム購入を考えていて住宅ローン減税の行方が気になる」という人は、今後のニュースなどで内容をウォッチしていきましょう。

 その際、ポイントとなるのは「減税期間」です。ひとくちに「住宅ローン減税の拡充」といっても、たとえば「ローン残高の上限が5000万円になる」といった内容では、実質的に恩恵を受けられる人は限られます。5000万円も借り入れる人は多くありませんし、先に見たように、そもそも減税の対象となる納税額が少なければ、毎年の減税額の上限がアップしても意味がありません。

 しかし、もし減税期間が10年から15年へというように延長されれば、戻ってくるお金の総額が増え、住宅ローン減税拡充の恩恵を受けられる人が多くなると考えられます。

 いずれにしても、住宅ローン減税拡充目的、さらに今までの前例を考えれば、今後の制度改正により、消費税増税分をカバーできるくらいのメリットを享受できる可能性があります。「消費税増税前に急いで買ったほうが負担が少ない」とは言い切れません。