フーサトニック・パートナーズの創業パートナーであり、人気書籍『破天荒な経営者たち』の著者であるウィリアム・ソーンダイクによると、1972年から1999年(バークシャーがシーズキャンディーズの収益をセグメントとして表示した最後の年)までの間に、シーズキャンディーズは32%の内部収益率(IRR)を達成したという。
「驚くべきことに、このIRRは無借金で達成したものであり、残余価値も含んでいない」とソーンダイクは言う。「購入価格を2倍にして、キャッシュフローや期間などほかのすべての条件を一定にした場合、IRRは21%になる。信じられないことだ」
2014年のバークシャー・ハザウェイの年次報告書の中で、バフェットはシーズキャンディーズの投資について株主に報告した。
42年間でシーズキャンディーズは19億ドルの税引前利益をバークシャーにもたらし、そのために追加した設備投資は4000万ドルだけだった。そして、シーズキャンディーズの収益は、その後、再投資に回り、バークシャーはほかの企業を買収して、さらに多くの利益を生み出していった。まるで「ウサギの繁殖」を見ているようだったと、バフェットは言った。
バフェットがシーズキャンディーズの買収から得た教訓は3つあった。
第1に、グレアムの株式購入法によれば、シーズキャンディーズは過大評価ではなく、実は大幅に過小評価されていた。
第2に、シーズキャンディーズの買収を実際に経験して、バフェットは、成長の遅い会社に高い倍率の金額を支払っても、資本を合理的に配分すれば賢い投資になるという洞察を得た。
最後に、彼の言葉によれば、「強力なブランドの持つ価値について学んだことで、ほかの多くの有益な投資に目を向けることができるようになった」のである。
もはや「バリュー対グロース」といった
対立構造ではない
バフェットがシーズキャンディーズを購入したとき、彼は、利益、配当、流動資産に比べて価格が低い銘柄だけを購入するというグレアムの厳格なルールから一歩踏み出した。これは今では重要な転換点と考えられている。
シーズキャンディーズの経験は、バフェットが強力なブランド価値を持つ消費財企業を購入する大きな要因となった。コカ・コーラがまさにそれだ。
1988年にバークシャーがコカ・コーラを買収したとき、株価は利益の15倍、キャッシュフローの12倍であり、市場平均に対してそれぞれ30%、50%のプレミアムがついていた。バフェットはこの株式を簿価の5倍で購入した。ベンジャミン・グレアムが教えたバリュー投資の厳格な原則に基づいて育てられた人々は、バフェットは先生に背を向けたのだと嘆いた。