上司にエスカーレーションする
姿をメンバーに見せる

 もちろん、自分に与えられた権限では意思決定できない場合もあります。

 その場合には、リアル職場で働いていた頃は、すぐに上司のところにメンバーと一緒に相談に行って、その場で意思決定をしてもらうようにしていました。

 ここで重要なのは、上司に意思決定を“丸投げ”しないことです。つまり、自分とメンバーで話し合って「自分たちの方向性や目的・ゴール」などを明確にしたうえで、「私たちはこのように考えていますが、よろしいでしょうか?」とジャッジを仰ぐようにするのです。

 これには、上司に意思決定を“丸投げ”して、無用の負担をかけることのないようにする意味があるのはもちろんですが、それ以上に重要なのは、管理職が上司からGOサインを得るプロセスをメンバーに見せることで、「社内でどのように意思決定が行われているのか」「社内で提案を通すためには、どのようなポイントを押さえるべきなのか」を学んでもらうことにあります。上司にエスカーレションする姿を見せることは、メンバー育成に直結するのです。

 また、こうした場で上司とメンバーの接点をつくることで、メンバーが頑張っている姿をプロモートすることもできます。このように、こまめに上司にエスカレーションをすることには、得難いメリットがいくつもあるわけです。

 ただし、リモート環境下ではこうはいきません。

 上司も管理職もメンバーも異なる場所にいるので、その場でエスカレーションをしにいくことができないからです。これは、リモート環境の大きなデメリットの一つと言っていいでしょう。

 リモート環境下でエスカレーションする方法はケースバイケースですが、私は、まずはメンバーをCCに入れて、上司に対して意思決定を求めるメールを出すようにしていました。

 重要な案件や込み入った案件の場合には、はじめからオンライン会議を申し入れることもありますが、上司の立場にたてば、リアルな職場で「ちょっとよろしいですか?」と声をかけられるよりも、オンライン会議をもちかけられるほうが負担感は大きいものです。だから、まずはメールでアプローチするのが妥当だと思います。

 ここで大切なのは、できるだけ簡潔に「何を意思決定してほしいか?」「具体的な提案内容」「その提案をする理由」などをまとめることです。上司が意思決定しやすいようにするのはもちろん、その文面を見せることが、リアルの場でエスカレーションするのと同様に、メンバー育成につながることを意識する必要があります。

 そのようなメールを出せば、多くの場合は、メールのやりとりだけで完結させることができるはずですが、より丁寧に説明する必要がある場合には、上司にオンライン会議をメール上で依頼します。そして、メンバーも交えた三人で話し合って、その場で意思決定をするわけです。

 ともあれ、ここまで述べてきたように、チーム内の個別ミーティングの場で、どんどん意思決定をしていくことを心がけることが大切です。そうすることによって、個別ミーティングを活性化することで、メンバーとの接触機会を増やすことができますし、定例会議にかける議題を減らすことで、効率的な会議運営(スピーディな意思決定)ができるようにもなるのです(詳しくは『課長2.0』をご覧ください)。