メンバーからの「ミーティング要請」に
最優先で対応する

 そのためには、メンバーからミーティングを求められたときには、できる限りそれに最優先で対応するようにする必要があります。

 メンバーの立場に立てば、必要性が生じたときにすぐにミーティングに応じてくれて、しかるべき意思決定をしてくれる管理職こそが「信頼するに足る存在」だからです。そのためには、管理職は自分の仕事を多少犠牲にしてでも、できる限りメンバーの要請に応えるのが基本です。

 もちろん、仕掛かりの仕事に区切りをつけるまでは待ってもらう必要がありますが、その場合でも、必ず「◯◯分からでいい?」と伝える必要があります(メールやチャットで連絡が来た場合は、即座にそのようなリスポンスをします)。

 ミーティングを求めてくるメンバーは何らかの不安を覚えていることが多いですから、「放置」されることを一番嫌がります。すぐにミーティングに対応できない場合でも、クイックリスポンスをすることで、メンバーを安心させるとともに、「大切に扱ってもらってる」と思ってもらうことができます。

 ただし、これにも限度があります。

 それでなくても管理職は忙しいですから、次から次に「ちょっとよろしいですか?」という声に対応していれば、自分の仕事がまったく進められないという状況になりかねません。しかも、メンバーとの「信頼関係」が深くなれば深くなるほど、ミーティングを求められる機会が増える結果を招くので注意が必要です。

 これは、リモート環境下において、より深刻な問題となります。なぜなら、スマホで簡単にオンライン・ミーティングができるようになるため、それこそひっきりなしにミーティングに対応しなければならない状況に置かれるからです。ですから、この問題への対応策はよく考えておく必要があるでしょう。

 私が管理職だった頃は、この問題への対策として、自分のスケジュールをチーム内で公開して、毎週、一定の時間をメンバーからの相談に応じるための時間として明示していました(例えば、「毎週月曜日の13:00~15:00、木曜日の10:00~12:00はミーティングOK」などとスケジューラに記入します)。

 そして、「何か、相談すべきことがあるときは、そのスケジューラ上でミーティングを設定してほしい」と伝えたのです。もちろん、緊急事態が発生した場合など、至急ミーティングをしなければならない場合は、その時間外であっても(重大な問題であれば深夜でも)、必ず対応するということは伝えます。

 これが定着してくれば、突発的なミーティングがある程度発生することは避けられませんが、それでも、ひっきりなしにミーティングをもちかけられて、自分の仕事に手がつかないという状況に陥ることは避けられるようになります。しかも、そうしたミーティングの場で、小さい意思決定を積み重ねることで、定例会議にかける議題を減らしていくこともできるのです。

定例会議を「責任回避」に使ってはならない

 もう一つ重要なポイントがあります。

 それは、定例会議を「責任回避」に使わない、ということです。

 いくら、メンバーが積極的にミーティングをもちかけてくれるようになっても、その場で管理職が意思決定するのを避けて、「定例会議でみんなで議論しよう」という結論になるようでは意味がありません。

 そもそも、定例会議にかける必要があるのは、メンバー全員で認識を統一する必要性が高い案件だけです。それに当たらない場合には、少人数ミーティングの場で、管理職が自らの権限においてどんどん意思決定していくべきなのです。それが、管理職の仕事なのです。

 にもかかわらず、「一応みんなの意見も聞いておこう」などという理由で、いちいち定例会議にかける管理職がいますが、これは「合議」を隠れ蓑にして、自らの意思決定責任から逃れようとしているだけです。

 その結果、定例会議まで意思決定が引き延ばされることによる機会損失も発生しますし、定例会議にかける案件が増えて、メンバーの貴重な時間を奪う結果を招くことになります。

 しかも、そのように責任から逃げようとする姿勢はすぐにメンバーにも伝わり、「いい人なんだけど、優柔不断で頼りにならない上司」と信頼を失う結果を招いてしまうでしょう。逆に、その場で意思決定をしてくれる管理職に対しては、「頼りになる上司」として、さらに「信頼」を深めてくれるはずです。