青山フラワーマーケットが
胡蝶蘭を扱わない会計的意味

 実は、このように胡蝶蘭や菊を取り扱わないことにした大きな理由に『小さな店舗』という理由が関わっています。

 青山フラワーマーケットのお店に行かれた経験のある人は、店舗面積がさほど大きくないことに気づかれたと思います。

 大半の店の面積は8坪、26平方メートル程度です。この小さなスペースで1店舗あたり年商7000万円、実に他店の7倍も売り上げる脅威の花屋が青山フラワーマーケットの正体です。

 そもそも、小さな店舗であるからこそ、商材を厳選する必要があるわけです。あれもこれもと、店に並べることは、物理的に不可能です。そこで、胡蝶蘭のようないつ売れるかわからない商材を扱わないことにしたのです。

 また胡蝶蘭のような高級鉢物は、どの花屋に行っても大抵大きなガラスケースの中で保管されています。このガラスケース代も経費の一部です。

 しかも、ガラスケースが置かれているスペースも賃料が当然発生します。高級な花ゆえに、売れるまで万全の体制で保管する必要もあり、適度な温度・湿度に保つためには電気代もかかります。これらの経費は、すべて花代の一部を構成するわけです。

 経費と利益の構造を理解している井上社長は、こうしたことに気づいたのでしょう。小さなお店で店舗の賃料を抑え、ガラスケースを置かずに、いっそ胡蝶蘭をやめれば固定費も削減できると考えたのです。そうすれば、現状よりもはるかに安い値段にでき、みんな買ってくれると思ったのです。