縮小する花卉(かき)市場で、目覚しい躍進を遂げている青山フラワーマーケット。市価の花屋さんよりも格段に安い値段、そして、かわいいグラスブーケがそろっていて毎日気軽に買ってもらえるような演出が成功しているといえるのですが、実はこれはマーケティングの視点よりも、会計的な視点でみた方が成功理由が簡単にわかります。そう、この成功は「固定費」「ロス率」の削減から導き出された必然的なものだったのです!今回は後編です。
花屋の「儲け」は
「在庫ロス」をどれだけ下げられるか
前編は「小さなお店」と「胡蝶蘭などを取り扱わない」ことで固定費を下げるという儲けのしくみを説明しました。連載後編は「在庫ロス」について考えてみます。
そもそも生花店というのは、廃棄率がとても高いものです。一般的な花屋のロス率は、採用した30%程度が普通で、その分、単価が高くなっています。
青山フラワーマーケットはそのロス率が非常に低いのですが、その秘密の1つが「ブーケ」です。花をちょっとでも知っている人ならばわかると思いますが、日にちが経った切り花は、水揚げという作業により蘇(よみがえ)ります。
水揚げとは、茎を切って花の先端まで水を行き渡らせる作業です。しかし、切り花にとって大事な茎は物理的に短くなってしまいます。そこで、この茎の短くなった切り花を廃棄するのではなく、フラワーアレンジをしてブーケを作るのです。
青山フラワーマーケットの売りのひとつに、ブーケになった花が店先を飾っています。実はこれ、在庫ロスを最小限に抑える工夫のひとつなのです。
茎が短くても、グラスに挿せばちょうどいい長さです。これらのブーケはグラスブーケというそうですが、コップに水を入れテーブルに置けば、いつもの部屋があっという間に明るくなる、お客様にとっても面倒がないという利点もあるのです。
そして、この点、会計的に考えれば、在庫ロスがないことでロスを見込んだ売価設定をせずに済む利点があります。