DX(デジタルトランスフォーメーション)を間違った方法で推進している日本企業は多い。また、ITベンダーやコンサルティング会社をうまく使いこなせていない例も目立つ。その結果、勝ち組と負け組が判明しつつあり、業績と給料に明暗も。DX成功のポイントは何だろうか。人気記事を基にひもといていく。DXの本質を知るには、ここで紹介する記事を押さえておくことが近道になるはずだ。(ダイヤモンド編集部副編集長 清水量介)
DX失敗の具体的事例から学ぶ!
ベンダー&コンサルの勝ち組は?
日本企業が今後も成長を続けられるかどうかは、DXの進展にかかっている。ここではダイヤモンド・オンラインに掲載され読者の支持を集めた記事から、「DXの成功と失敗の分かれ目」を探っていきたい。
「DX推進は単なるITツールの導入ではなく、経営の抜本的な改革が併せて必要」。DX成功のためによく語られる教訓だが、それが恐ろしいほど当てはまるのが、セブン&アイ・ホールディングスの事例だ。多額のコストと人材を投入した同社のDX戦略は、わずか1年で水泡に帰したのだ。
『【スクープ】セブン&アイのDX、担当役員は失脚しIT新会社は白紙!内部資料で暴く「完全崩壊」全内幕』では、大量の極秘社内資料を基に、その様を解明。創業家の役員が絡む人事のゴタゴタや、ITベンダー、コンサルティング会社など外部の取引先まで巻き込んだ混乱が克明に描かれている。「DXを成功させるには経営者の覚悟が必要」ということが分かる教科書のような記事だ。
次も失敗のケース。一言に「DX」といっても、その幅はかなり広い。社内の業務改革なのか、顧客向けのものなのか。あるいは、その両方か。しかし、「顧客向け」のトラブルの多さでは、みずほ銀行の右に出る日本企業はいないだろう。
IT業界のインサイダーたちが集まり本音で語る座談会『みずほシステム障害「あれ、絶対直すの無理」と同業者が断言する理由【IT業界インサイダー座談会4】』では、みずほのシステム修復が絶望的なことが分かる。派閥争いに腐心し問題解決を後回しにしてきたツケが回ってきているという意味では、セブン&アイと同じく経営陣こそが失敗の原因といえよう。
なお、同じメンバーによる『「セブン、まず取締役会のDXが必要だったかもね」【IT業界インサイダー座談会・番外編】』は、セブン&アイのDXがテーマだが、日本企業全般に当てはまるDX失敗の本質をズバズバと言い当てているから、必読だ。
DX推進が事業や人員の大規模なリストラを迫るということが、よく分かるのが『日立本体に吸収した上場子会社で「無慈悲リストラ」、新社長の剛腕にグループ震撼!』だ。
記事では、日立製作所が完全子会社化したばかりの日立ハイテクの主要部門を大幅に縮小する方針を紹介。当該部門の社員は日立本体のDX事業要員として移管される見通しで、大幅な職務変更を迫られる(記事公開時点)。
リストラには常に是非がつきまとうものだが、日立は「何も変えない」という姿勢ではなく、DXのために大きな構造改革に踏み込んでいる。セブン&アイやみずほ銀行の記事の後に読めば、その差は歴然だ。また、『日立とパナソニック、「IT企業巨額買収」の大博打を徹底検証!脱・製造業に近いのは?』で触れられているように、日立はパナソニックと並んでDX推進のため巨額買収も進めている。
DXの提供側も激変している。ITサービス業界はDX推進の大きな追い風を受けているが、実は、その恩恵を享受しているのは一握りの企業。今後は「御用聞き」ITベンダーが不要の烙印を押される、大淘汰時代がやってくるのは確実。
『NTTデータ・野村総研…DX勝者は一握りで「御用聞きベンダー」は淘汰へ、IT業界の5年後』では、野村総合研究所、オービック、NTTデータ、TIS、CTC、日本ユニシス、SCSKという主要7社の業績を5年間で予測し、年収も比較。収益モデルの分析を基に、どこが勝ち組で、どこが負け組になるのか、各社の明暗を浮き彫りにする。
潤うのはITサービス業界だけではない。コンサルティング業界も拡大中で、特に強いのがアクセンチュアだ。『アクセンチュアがコンサル業界「独り勝ち」の理由、デジタル戦略&規模が鍵』ではなぜ同社が強いのか3ポイントで解説している。
ただし、ITサービスもコンサル会社も、うまく使わなければDXは成功しない。『【スクープ】セブン&アイと野村総研の蜜月に横やり、DX担当役員の「不始末」に創業家激怒』では、セブン&アイ内部の暗闘が、ベンダーとコンサルを混乱に巻き込んだだけということがよく分かる。やはり、DXとは経営そのものなのだ。
なお、「セブンDX敗戦」は全15回としていたが、近日中に複数の記事の追加を予定している。また、3月初旬には新たにDX関連の特集も公開予定だ。