相続人が寄付に反対する?
実際に、寄付に反対する相続人が多いのは事実です。寄付をされると、自分たちの取り分が少なくなるので、そういった感情が起こりやすいのかもしれません。
そのため、親族が生前中に「あなたが亡くなったら遺産は寄付するわね」と言っていても、亡くなった後に「やっぱり遺産は私がもらうわ!」と約束を反故にされることもありえます。
では、遺言書による寄付であれば、相続人たちの反対を押し切り、確実に寄付することはできるのでしょうか? 答えは、半分正解で、半分不正解です。
遺言書は、相続人全員が同意をすれば、その内容を変更することは可能ですが、遺言書で寄付をする旨が定められている場合には、その寄付を受ける団体の了解がなければ、寄付する意思をなかったことにはできません。
遺留分と寄付の問題
ここで、注意しなければいけないのは、遺留分の問題です。この権利があるため、例えば「全財産を○○団体に寄付する」といった遺言があったとしても、相続人は、その団体に対して「遺留分を返せ!」と請求することが可能なのです。
また遺留分を侵害していなかったとしても、自分の取り分が減ることに憤慨し、その団体に対して、「父をそそのかして、遺言書を無理やり書かせただろ!」と詰め寄るケースも実際にあります。そして、「この遺言書は父の本当の意思ではないため無効」と訴えを起こすのです。
「揉めてほしくないから寄付します」は間違い?
よく「家族が揉めるくらいなら、遺産はすべて寄付します」という人がいますが、実際には、寄付先に対して訴訟を起こすこともできます。相続トラブルを避ける目的で、寄付という手法が有効なわけではないのです。
こういった事態を防ぐためにも、遺言による寄付をする場合には、公正証書遺言によって、公証人からの意思確認を積極的に受けましょう。その点、相続人が兄弟姉妹となる場合(配偶者や子ども、父母がいない場合)には、遺留分を気にする必要はありませんので、ご自身の好きな団体への寄付を検討しましょう。
いずれにしても遺言書による寄付の場合には、あらかじめ家族の理解を得ておくのが無難です。
(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続「手続大全」ーー相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を編集・抜粋したものです)