地域住民の外出を促すコンテンツの関係者の協力

「移動サービスが必要か否か」と問われれば、誰でも「必要」と答える。しかし、そのことと移動サービスの収益化を支えるほど住民の利用があるかどうかは、また別の話である。実際、このアーデンヒル自治会で、地域住民の徒歩移動実績調査を行った結果、住民約1300人のうち、ある1週間で東逗子駅まで徒歩で移動した人は30人ほどであった。この程度のサービス利用者数では収益化はとうてい望めない。

 地域住民の活動量の低さの背景として、「地域の約2割に相当する世帯が65歳以上かつ単身者、または2人世帯」「都心からの移住者が多く、横のつながりが希薄」といったことが挙げられる。一方で、地域住民が移動サービスを要望した背景には、「所得の低下・免許返納などに伴い、自家用車を手放す必要が生じていること」「そのために安価な移動手段が求められていること」などもあるようだった。

 アーデンヒル自治会の実証実験の移動サービスは、逗子市内で活動するタクシー事業者を活用することが前提である。しかし、タクシー料金は高く、「安価な移動手段」にはそぐわない。「乗合」を前提にしたのは、料金を按分することで1人当たりの単価を下げることを実現するためである。

 さらに、収益化のために移動サービスを段階的に拡張していくには、アーデンヒル自治会の住民の活動レベルも段階的に高めていく必要がある。そのためには、「外出の理由(動機)」と「理由になりうるコンテンツ」を準備していかなければならない。

 地域住民に「外出の理由(動機)」に関するアンケートを行った結果、移動サービスの主たる利用者になりうる高齢者および在宅主婦層は「買い物」「趣味娯楽」「通院」が主な理由であることがわかった。そこで、それらの理由をコンテンツ化している小売業・娯楽施設・病院などの関係者に向けて、移動サービスの背景・目的について共有し、理解促進と移動サービスに対する支援を要望することとなった。